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アートの新潮流をつくろう! ギャラリストになるために大切な5つのこと。

  • 2018.12.17
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アートの新潮流をつくろう! ギャラリストになるために大切な5つのこと。
2018.12.17 12:00
ギャラリストとは、自分のギャラリーをもつ美術商のこと。巨匠たちの作品を正しく広めたり、若い才能を見出し、育て、世界に発信するなどの重要な役割を担う人たちだ。では、どうすればギャラリストになれるのだろうか? 審美眼の養い方から芸術家たちとの関係構築、そしてギャラリー空間を持つ上で大切なことを、NYを拠点にキュレーター、アートコンサルタントとして活躍するショーナ・マーシャルが教えてくれた。


アートの世界において、ギャラリストの果たす役割はとても重要だ。芸術をこよなく愛するだけでなく、ビジネスにも精通していることが求められるこの仕事は、情熱がなければ務まらない。しかし、自分の画廊を所有し、芸術家たちと協働しながら、彼らの作品をコレクターに紹介して販売するという「橋渡し役」を通じて、これからの芸術が進む道を変えることだってできるギャラリストは、とてもエキサイティングな仕事だ。


では、どうすればギャラリストになれるのだろう? どこで学ぶべきか、どのようにマスターピースを見出す目を養うのか、自分の画廊を持つためのヒントなどを、専門家への取材からまとめてみた。

1. まずは美術史を学ぼう。


ギャラリストになるための教育に、決まったルールはない。大物ギャラリストのラリー・ガゴシアンは英文学の学士を取得し、デイヴィッド・ツヴィルナーはジャズ音楽を専攻した。ヴィクトリア・ミロとマヌエラ・ワースは、ともに教師からギャラリストに転職している。しかし、多くのギャラリストに共通するのは、過去を理解し、現代について語れるように、美術史を学んでいるということ。例えば、ニューヨークのアートシーンの女王、メアリー・ブーンは、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで美術史を学んでいる。


美術史で教養学士を取るために世界最高と目されるのは、ロンドンのコートールド美術研究所だが、興味のある分野によって、大学を選ぶこともできる。例えば、プリンストン大学は、中世美術を研究するための世界有数の資料と言える目録を所有しているし、ニューヨーク北部にあるバード大学のキュレーション学センターの大学院は、現代美術の歴史と展示方法をもっとも集中して学べる場所と言われている。これらの権威のある研究機関に加えて、世界中で新しいプログラムが生まれている。例を挙げると、アラブ首長国連邦(UAE)でルーブル・アブダビをはじめとした 7 つの美術館が開館するのと時を同じくして、パリ・ソルボンヌ大学アブダビ校では、美術史と美術館学の修士課程が新設された。

2. 知識よりも情熱! 審美眼の養い方。


画廊界で真に存在感を発揮するには、一所懸命に勉強して得た知識以上に、情熱が欠かせない。美術館やギャラリーに足を運び、アートに触れることが最高の教育なのだ。作品の前で立ち止まり、作品を検証し、それが語りかけることに耳を澄ませよう。芸術家と社会をつなぐギャラリストは、作品に隠された意図を理解できる能力を養う必要がある。1997 年、自身の最初のギャラリーをオープンする前夜、サディ・コールスはあるインタビューで、芸術家サラ・ルーカスの作品との出合いが、彼女をギャラリストに導いたと語っている。コールスは、次のようにも説明している。


「私がロンドンの有名ギャラリー、アンソニー・ドフェイで働きはじめてすぐに、ルーカスの並外れた才能に魅了されました。当時の私は、彼女が自分のキャリアにどれほどの影響をもたらすことになるのか、わかっていませんでしたが」


一方、東京に拠点を置くタカ・イシイギャラリーの石井孝之は、彼と芸術家との結びつきを結婚になぞらえる。


「それは長期的な関係です。芸術家たちが生み出す作品だけではなくて、彼らの性格を考えることが重要なのです」


興味を惹かれ、心を躍らされる芸術家の作品を扱うギャラリストというキャリアにおいてもっとも重要なのは、石井が言うように芸術家との絆を築いていくことだ。実践的な経験を積むにつれて、芸術家とコレクターとの橋渡しをすることの機微がわかってくるだろう。

3. 目指すべきギャラリストは?


ギャラリストになるためには、この仕事に不可欠な本質的な性質を備えている必要がある。まずは、共感能力だ。あなたの時間の大部分は、芸術家とコレクターの要望や希望、願望の折り合いをつけることに使われることになる。例えば、アーティストの中には、作品の方向性を導いてくれるようなヒントを求める人もいれば、ギャラリストには作品の販売だけを望む人もいる。彼らが何を求めているのかを察知する感受性と直感に加え、作品を販売するためには自信も必要だ。この場合の自信とは、作品を信じること、そして、長年の経験とアート市場の流れを注意深く追うことによって得られる知識から生まれるものだ。ギャラリストの仕事は、販売を通じて芸術家の知名度を上げ、メディアに取り上げてもらえるよう働きかけること。さらに長期的には、大きな美術館からも注目されるようなアーティストを育てることだ。


ギャラリストにはさまざまなタイプがいる。販売力で有名なギャラリストもいれば、芸術家の創造性を最大限に引き出すことで知られる者もいる。ベテランアーティストの過去の作品を専門とする人もいれば、新しい才能を見出すのに長けた人もいる。まずは、あなたはどんなギャラリストになりたいかを自問してみることからはじめよう。

4. 自分らしい空間の作り方。


担当する芸術家がいて、その作品を展示するとなれば、ニーズに合った空間を見つける必要がある。場所は重要だ。それぞれの街には、各々の特色がある体。


ベルリンは、他の主要都市に比べて不動産コストが低いため、多くの芸術家がこの街に拠点を置いている。彼らのニーズに応えるベルリンのギャラリーは、自ずと存在感が高い。ロンドンやニューヨークには多数の重要なコレクターが住んでいるため、こうした都市での売上は高くなる。新興マーケットとして注目される中東で新しい才能に出会いたいなら、ベイルートがいいし、広大なロサンゼルスには余剰空間も多く、新しいギャラリーのオープンが急増している。


一流ギャラリーの多くが、これらすべてのニーズに応えるべく、複数の都市に不動産を所有している。たとえば、デイヴィッド・ツヴィルナー・ギャラリーは、ニューヨーク、ロンドン、香港にギャラリーを持っている。


拠点となる都市が決まったら、展示する作品の種類にもっとも合う建物を見つけよう。その際のポイントは、ギャラリーの性格にあった雰囲気をつくりあげること。多くの現代アートギャラリーに共通するのは、飾り気のない白い壁に天井に並んだ蛍光灯、そして、剥き出しのコンクリートの床という、ミニマルな空間だ。もちろん、例外もある。ロンドンのドーバーストリートにあるギャラリー・タデオス・ロパックは、18〜19世紀最高の俳優と称えられたエドマンド・キーンの住んだ 18 世紀の豪邸内にあり、ロサンゼルスのハウザー & ワースは、小麦粉工場の跡地に居を構えている。


せっかくいい建物を見つけたけれど、予算が足りない……。たとえそうであっても、夢の実現を諦めてはいけない。ギャラリーcfcpを創設した 25 歳のメアリー・ハワードは、ブルックリンにある自宅のリビングルームと使っていないベッドルームを展示スペースに変え、彼女が扱う新進気鋭の芸術家たちの作品を紹介している。

5. フェアを通じて世界に飛び立とう!


拠点を構えたら、世界中で数多く開催されているアートフェアへの参加を検討してみよう。現在、世界でもっとも権威あるとされるアートフェアは、アート・バーゼル(バーゼル、マイアミビーチ、香港で開催)やフリーズ・ロンドン(ロンドン、ニューヨーク、2019 年 2 月よりロサンゼルスでも開催)など。しかし、こうしたフェアは、どんなギャラリーでも参加できるわけではない。参加を希望するギャラリーが企画書を出し、選考委員会が展示デザインやキュレーションの基本方針、ギャラリーの志向などを評価した上で決定されるのだ。ロンドンとニューヨーク、マラケシュで開催される1-54 コンテンポラリー・アフリカン・アートフェアの創設者であるトゥーリア・エル・グラウィは、自分の扱う作品に適したフェアを選ぶことが大切だと説く。


「フェアの価値観と使命を視覚化するためには、ギャラリーとの連携が不可欠です。特に、私たちは世界でも歴史的に軽視されてきた地域の芸術家と仕事をしているため、いわゆる『アフリカの美』という古い概念に立ち向かおうとするギャラリーに出展してもらう必要があるのです。つまりアートフェアとは、同じ志を持つギャラリーと共に創り上げるものなのです」

Text: Shonagh Marshall

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