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原因は“劣化”!? 二十歳の若者たちが恋愛をしなくなった理由3つ

  • 2015.3.10
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【パパからのご相談】

50代。欧米のアロマ製品を輸入販売する会社を経営しています。21歳の娘と19歳の息子がいますが、恋愛の“れ”の字も縁がないような暮らしをしており、スマホとゲームが恋人のような感じです。

彼らの人生なので文句を言うつもりはないのですが、私の会社も長引く円安による輸入コスト高騰の影響もあって最近は経営が厳しく、従業員に再就職先を紹介し終えたら会社は畳み、アロマ評論家として再出発する予定です。でもここまで頑張ってこれたのは妻と恋愛し結婚して子どもたちを授かり育てる中で、「家族のために踏ん張らなければ」という思いがあったからで、“恋愛を知らない子どもたち”ばかりになってしまったら、彼ら自身の将来もこの社会の先々も、大丈夫なのでしょうか。

“恋愛を知らない子どもたち”が増えた理由を教えてください。

●A. 由々しきことですが、子どもたちのせいばかりではありません。

ご相談ありがとうございます。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

結婚情報サービス会社であるオーネットの意識調査によると、2015年の新成人600人のうち、男性の50.0%、女性の45.7%が、今までに、「交際した相手は1人もいない」と回答したそうです。さらに特筆すべきこととして、「交際相手がほしい」と回答した人も全体の62.6%と過去最低を記録し、2000年の90.0%から大幅に減っていることが明らかになりました。

どうして子どもたち・若者たちは恋愛をしなくなったのでしょうか。都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師にお話をうかがってみると、子どもたちのせいばかりでもない、さまざまな問題が見えてきました。

●若者が恋愛をしなくなった理由3つ

●(1)男性も女性も劣化して、“交際したい”と思えるような尊敬できる異性と出会えない

『クリニックを訪れる患者さんたちの話を聴いていると、男性・女性関係なく“人としての劣化”がここ数年の間で急速なペースで進行していることを痛感させられます。派遣で働く人から見れば圧倒的に恵まれている正社員の人が職場の中で口汚い言葉をわめき散らしながら行動しているといった話を何人もの患者さんから聴きますし、そうかと思うと本来は正々堂々とした爽やかさがウリであるはずの体育会系スポーツマンの男子学生から半ば“力ずく”的な方法で交際を迫られたというような話も、複数の女子学生から聴いたことがあります。

テレビをつければ本当なら子どもたち・若者たちのお手本になっていただかなければ困るような地位にある人々の口から少数派の人たちに対して、「そっちはどうなんだよ」「犯罪者集団の味方をするのか」「女のくせに子どもも産めないのか」といったような趣旨の、聞くに堪えない野次が飛びまくっています。

こういった“劣化”の傾向は私がクリニックを開業している地域でもここ数年特に顕著なものですが、若者が異性と交際したくても、交際しようと思う相手がこのような劣化の風潮に毒された人格では、とてもそんな気にはなれません』(50代女性/都内メンタルクリニック院長)

●(2)世の中が“経済的な価値尺度でしか物事を測れない”雰囲気に逆戻りしつつある

『恋愛しない子どもたち・若者たちの増加を“草食系”“絶食系”“断食系”といった言葉でもって単なるライフスタイルの変化であるかのように片づけてしまう態度にも問題があります。若い人たちが恋愛をしなくなったことには、それなりの理由があると考えるべきです。昭和30年代の前半に生まれた私から見ると、戦後およそ70年という長い時間をかけてそれなりに価値観が多様化し、思想的にも自由化してきたこの社会が、ここ数年は“経済的な価値尺度でしか物事を測れない”雰囲気に逆戻りしつつあるように映っております。

これでは男性と女性がお互いに畏敬の念をはらい合い、“異性”として“人”として大切にする姿を、子どもたちや若者たちに見せられないのではないかと危惧するのです。

一つ例を挙げてご説明しましょう。山田洋次監督による国民的人気映画であった“男はつらいよ”シリーズの主人公である渥美清氏(故人)扮する“フーテンの寅”こと車寅次郎は、気が向いたときにするテキヤ業の僅かな収入しかないにもかかわらず、年に何回か葛飾・柴又の実家に帰りながら、旅に出ると必ず自立したステキな女性に恋をして、また女性の方も寅さんの利害や損得を度外視した純粋な気持ちに惹かれ、恋愛関係に陥っていました。寅さんシリーズの映画があれほどまでに愛されたのは、経済成長最重視という時代の価値観に対して、「世の中お金が全てじゃないさ」という“もう一つの価値観”が、広く私たちの精神の根底に根を張ってきていたからに他なりません。

今はどうでしょうか。気の毒にも若い人たちは、みんな「経済的な価値尺度」という“物差し”の前で、委縮してしまっているように見えます。

・「年収100万円台や200万円台の人間に、人を好きになる資格などあるものか」

・「恋愛して結婚して子どもができたとして、アンタに育てられるの?」

・「ブラック気味とわかっていたって、一定の収入を得るためには今居る職場で頑張るしかない。午前6時に起きて午前2時まで働く日が何日も続くような環境では、土日なんか寝るだけ。恋愛なんかする時間もなければ、する気力もない」

悲しいかなこれらはみな、実際に私が患者さんの口から出た言葉をカルテに記したものなのです』(前出・都内メンタルクリニック院長)

●(3)そこにきてネットやSNSの発達が、若い人に固有の“嫉妬心”の膨張に拍車をかける

『男性も女性もすべからく劣化し、世の中の風潮は経済最優先のところにきて、ネットやスマホやSNSといった情報通信手段の発達が、若い人たちが本来持っている“嫉妬心”や“猜疑心”といったものの膨張に拍車をかけています。若者や子どもは中高年のようには経験が多くないため、好きな異性の人間くさい諸行動をどうしても“許せない”ときがあります。

たとえばAくんとお付き合いしているBさんが、同じゼミのCくんから、「卒論中間発表の練習をしたいんだけど、コーヒーごちそうするから学食のカフェテリアで聴いてくれないかな」と頼まれたとします。ネットがない時代だったら別に気にせずそうしてあげればいいだけですが、今はその一部始終をCくんがSNSにアップしたりするため、Bさんとステディな気持ちでおつき合いしているAくんとしては若者らしく余計な嫉妬心・猜疑心が胸をよぎり、「こんなに心をかき乱されるくらいなら、異性とつき合うのなんかやめておこう」となってしまうのです』(50代女性/前出・精神科医師)

私どものような孫もいる年代の者からしたら、妻が取引先の方から、「おいしいコーヒーをごちそうしますので、もう一案件ほど商談お願いします」と言われたら「よかったねえ。高そうなコーヒーが飲めて。俺も飲んでみたいよ」となるだけなのですが、若い人はそうはいきません。その一途さが、若い人たちの財産でもあるのですから。

●愛する人と2人で生きていれば、いざというときに“片肺飛行”でも飛ぶことができます。

『精神医学会の大先輩にあたる方で若い頃フォークのシンガーソングライターとして活躍していた人が、その昔“戦争を知らない子どもたち”という楽曲の作詞を手がけ、大ヒットしました。曲が発表された1970年当時の若者たちをそう呼ぶことによって、その時代の空気を見事に表現したものですが、それにならって言うならば、現代は“恋愛を知らない子どもたち”の時代と言えます』(50代女性/前出・精神科医師)

恋愛を知らない子どもたちへ老婆心ながら申し上げます。いま世の中全体を覆っている“一にも二にも経済最優先”の風潮に、あんまり左右されないでください。人生にはお金も大事ですが、既に7割がた人生を生きてしまった者として言わせていただけるのなら、人生で大事なことは“どんな異性を好きになったか”(人によっては“どんな同性を好きになったか”もあり)、“その好きになった人とどんなものを食べ、どんなお酒を飲みながら、どんな話をしてきたか”、といったことなのです。

「男はせめて年収300万円は稼がなければ男とはいえない」だとか、「経済力のある男と一緒になれば専業主婦でいられる」だとか、そんなセレブリティ-に負い目を感じたような物言いをしていてはダメです。行政のせいだとか大企業のせいだとか学校のせいだとか言ってみたところで何にもなりません。

好きになった人といつも力を合わせて2人で生きていれば、片一方にもし不測の事態が起きたときでも、軌道を取り戻すまでの間を「片肺飛行」で飛びつづけることができるのです。

ご相談者さま、“恋愛を知らない子どもたち”へ言ってさしあげてください。あんまり傷つくことを怖れないで、好きになった人へ素直におつき合いを申し込んでみましょう、と。スマホやゲームといった2次元の世界ではけっして得ることのできない充実した幸せが、きっと待っています。おじいさんは、胸を張ってそう申し上げます。

【参考リンク】

・第20回新成人意識調査 2015年新成人(全国600人)の生活・恋愛・結婚・社会参加意識 | 株式会社オーネット

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。