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アーティスト荒神明香さんが語る、トロフィー制作の裏側。

  • 2018.11.26
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アーティスト荒神明香さんが語る、トロフィー制作の裏側。
2018.11.26 12:00
VOGUE JAPAN Women of the Year 2018年度の受賞者に贈られるトロフィーを手がけたのは、繊細さと大胆さが交錯する作風が印象的なアーティストの荒神明香さん。アートピースのようなトロフィーが出来上がるまでの制作過程を追った写真とともに、荒神さん自身の言葉で語られるトロフィーに込めた思いに、ぜひ触れてみてください。


WOMEN OF THE YEAR 2018のトロフィー制作のお話をお聞きしたとき、直感的にピンときたのは、私が以前に制作した「reflectwo」という作品でした。「reflectwo」は、山の稜線や周辺の景色が川の水面にくっきりと映る風景を目にしたときの体験から生まれた作品です。水面に映る景色をぼーっと見ていると、地続きで境界が曖昧な山や周辺の風景がまるでポコッと宙に浮かんだ一つの塊のように見えてきて、何気ない景色に秘められていた強烈な存在感に対峙したように思えたことが制作の動機になりました。その後、試行錯誤の結果、造花の花弁を使って制作したのが「reflectwo」でした。


私が女性に輝きを感じるとき、はじめに綺麗だなと目を奪われ、それから不思議とまるでそれとは対称とも言えるような、怖いと思うほどの強い存在感を感じることがあります。それは、うまく言い表すのが難しいのですが、まるで相反する性質が同時にあることに、何か惹き付けられるエネルギーが宿り、それを感じているような感覚です。


水面に映った景色に目を奪われたときの体験も、まさにそんな感覚にとらわれるものでした。自然の持つ有機的で美しい曲線と、それが水面に映り無機的でシンメトリーな配置を保つ様子。その双方が周辺から独立するはずのない風景として、一つの塊として見えたときに、そのもの本来の存在感に出会ったような気がしました。輝く女性の美しさには、どこか「水面に映る景色」に共通する存在感があるように思います。


今回のトロフィー制作では、本物の花弁を用いて風景を作り、透明なアクリルに封入しています。小さな花弁一枚一枚に見られるきめ細かな花脈、風景にインスパイアされた有機的な曲線、そのフォルムはどこか女性の身体のようでもあります。そして、それとは相反するように、シンメトリーに構成された無機的な形状と、アクリルに封入した物体感。


そういった両義的な性質によって作られたトロフィーが、輝く女性の姿と呼応して、少しでもその美しさを引き立てることができればと構想しました。縦に立つトロフィーとして、また横にして置いたときには小さな景色が楽しめるオブジェとして、皆様の側に添えていただけたら幸いです。

荒神明香

Haruka Kojin


1983年 広島生まれ。2009年 年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。日常の風景から直感的に抽出した「異空間」を、美術館等の展示空間で現象として再構築するインスタレーション作品を展開。東京都現代美術館、サンパウロ近代美術館、ポンピドゥーセンターなど、国内外で作品を発表。現在、犬島 家プロジェクト、上越新幹線「現美新幹線」車内にて常設展示中。2013年より現代芸術活動チーム「目【め】」を結成。「目【め】」としての活動に、2014年「たよりない現実、この世界の在りか」(資生堂ギャラリー、東京)「おじさんの顔が空に浮かぶ日」(宇都宮美術館館外プロジェクト)など、2018年第28回 タカシマヤ文化基金受賞。


portrait photo: Kenshu Shintsubo

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