【海外ドラマ】驚きと笑いの後、心にじわりと響く人生の哀歓。

ここ数年で始まった海外ドラマから、特におすすめしたい10作を厳選した短期連載。最終回は、文字通り生きる意味や愛について考えさせてくれる隠れた名作「フォーエバー～人生の意味～」。

「サタデー・ナイト・ライブ」の人気者で、映画にも多く出演するマーヤ・ルドルフ＆フレッド・アーミセンが味わい深い夫婦役に。

「フォーエバー〜人生の意味〜」（2017年～）

カリフォルニア郊外に暮らす夫婦、ジューンとオスカーを主人公にしたコメディ。夫婦を演じるマーヤ・ルドルフとフレッド・アーミセンは、日本での知名度は低い。アメリカの老舗番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身と聞けば、才能あふれるエンターテイナーであることは想像できるだろうか。しかし、そうした先入観は第１話から見事に裏切られる。もちろん、良い意味で。

平凡な男女が出会って、恋をして、結婚する。毎日食事を共にし、他愛のない会話を交わし、休暇は毎年同じ湖の別荘で釣りをしながら過ごす。その繰り返しが、冒頭の約5分でセリフなしに映像で示される。その始まりからして、詩的でしゃれた本作のアーティスティックな世界観を感じ取ることができる。だが、第2話以降がまた想定外の連続。これは実に奇妙で、一風変わっているけれど、人生の哀歓がしみじみと心に染み入る、あるひとつの真理を描いた作品なのだ。

夫のいない人生を前向きに生きようとしていた矢先に、ジューンの身にとんでもない出来事が……。

どの結婚・恋愛にも悩みはあるし、完璧な人生なんてあるはずがない。そうはわかっていても、ふと人生これでよかったのだろうかと思う瞬間は、誰にでもあるはず。そして、人は平穏な日常がどれほど慈しみ深いものであったかを、いとも簡単に忘れてしまう生き物なのだ。本作は1話が約30分前後、シーズン1は全8話。毎回が短編小説かエッセイを読むかのように、テイストや語り口が異なるように感じられる。胸を突き刺すような痛みや、じんわりと心に広がる温もり、あるいは数え切れないほどの後悔の念と、たくさんの愛情。さまざまな感情が去来する。自分にとっての幸せの意味や愛について思いをめぐらせながら、1話1話をじっくりと味わいたい。

「フォーエバー～人生の意味～」シーズン1予告編。