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京の雅を支える老舗女将が伝授~女磨きの極意

  • 2018.10.31
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「女磨き」という言葉から、皆さんはどんなことを想像しますか。

普段の生活ではあまり意識しない「女磨き」ですが、芸妓や舞妓が活躍する京の雅の世界では、芸事はもちろん、優雅な所作やおもてなしなどの女磨きが、やがて雅という日本文化の真髄へと繋がっていきます。

また雅な世界で生きている女性たちは、女磨きの極意を熟知しているはずです。

そこで、京丸うちわや京扇子の提供を通じて、雅な世界の女性たちの女磨きの極意を小丸屋住井の10代目当主・住井啓子さんにお聞きしました。

「京の雅」はあか抜けていく過程。芸事や所作を身に着けていくことが一流につながる。

―――小丸屋住井が、雅な世界と関わりを持ったのは、いつからですか。

住井さん(以下、略)「創業は寛永元年(1624)年です。小丸屋住井はうちわをつくり続けてきた老舗で、伝統の技を受け継ぎ、守ってきました。新作も発表しています。

また明治の頃より五花街の「北野をどり」「都をどり」「京おどり」「鴨川をどり」「祇園をどり」など春の踊りに、各流派の舞踊会を支える扇子や舞扇などの小道具も制作しています。

―――4世紀に渡る老舗が作るうちわは、まさに京都の文化を物語っています。

「京丸うちわは、表に紋を入れ、裏に舞妓さんや芸妓さんの名前を朱書きしたものです。

また日本舞踊の演目ごとをモチーフにした舞扇子を、五花街の芸妓や舞妓に提供しています」

―――住井さんは10代目ということですが、小さい頃から家を継ぐという意識を持っていましたか。

「はい。三人姉妹の長女でしたから、継ぐのは当たり前と捉えていました。

また日本舞踊や三味線など芸事が好きなおばあちゃんの影響を受けて、私も6歳ごろから日本舞踊を習うようになったのです」

―――代々続く家系に生まれ、雅な世界で生きる女性たちを、子供のことから見聞していたわけですが、住井さんが捉える「京の雅」とは、どんなものでしょうか。

「芸妓や舞妓は、京都出身者が少なくなり、最近は地方出身の女性たちが増えています。日本舞踊や三味線などの稽古事や、所作や作法などを、師匠さんや女将さんたちからとても厳しく指導され、それに応えて磨かれていくうちに、『板につく』という言葉通り、芸事や所作が身についていき、やがてあか抜けていくのです。かづらのかんざしから着物、帯、帯どめなど、身に着けているものが雅です。これが京の雅というものでしょう」

―――それはまさに周防正行監督のミュージカル映画「舞妓はレディ」(2014年)が描いた世界そのものですね。映画でも、地方出身者の少女が花街で芸事や所作、京ことばの稽古にいそしみ、やがて舞妓になるという成長物語ストーリーでした。何度もくじけそうになり、それでも歯を食いしばって頑張るヒロインを周囲が支えていくという展開です。

あいさつの仕方から、『おねえさん、おはようさんどす。おおきに』という感謝の言葉など、隅々まで京都の花街の所作を教え込まれます。厳しい芸事に耐え、苦しさを乗り越えてから、やっと精神も強くなっていける。人との関係もすっとうけとめられたり、交わしたりすることができて、おもてなしのプロになっていきます。

女将さん、お姉さん、師匠、お客さんらに支えられながら、目の前にあることをとにかく必死にやっていくことが大事なんですね」

女磨きの極意は「徳分」と「自己の客観視」。人磨きにも通じる。

―――人に恵まれたり、周囲に支えられる人は成長していき、仕事でも恋愛でも、自分が描くような流れになっていきます。

雅な世界では、どんな女性が成長していきますか。

素直で明るい女性は、磨かれていきますね。ひたむきな性格も、周囲から支えてあげたいと思われます。芸事には苦しさが伴いますが、それを乗り越えていくと、輝きも増してきます。芸に対する熱い思いが強い女性は、伸びますね。芸に対する姿勢はその人の心かげによりますから、ますます磨かれ、さらに輝いていきます」

―――明るく素直な人は、どの世界でも好かれますね。芸はもちろん、エレガント(雅)を磨くためにやっていることは、なんでしょうか。

徳を積むことですね。これを徳分といいます。善い行いをすることはもちろん、自分が一生懸命に取り組んでいることによって、道が開けていきます」

―――自分自身の軸を持つまでは苦しさも肥やしになるということですね。とても深い境地です。

「自分の軸が出来上がると、人を許すこともできます。許すというのは最初からできないものです。人には執着というものがありますからね。でも軸を持つと、それこそ『信念不動』になって、多少のことならスルーできるようになりますよ」

―――女磨きだけでなく、人としても磨かれていくということですね。

では軸を持つには、どうしたらいいのでしょう。

「飛行機の窓から、下界を見たときのことを思い出してください。自然も高いビルもなにもかもが小さく見えますね。このように、自分を俯瞰してみると、狭い了見にとらわれることなく、自分も周囲も見渡せるようになります」

―――客観的に自分を見てみることが、軸を作るために必要なことですね。

徳を積み、苦しさから見出した自分の答えや結果を踏まえながら、自分を客観視する。

これが、女磨きにも、人としての磨きにも精通していくということですね。

「そうです。自分を高いところから俯瞰してみる。すると大切なことが見えてきますよ。」

―――ありがとうございました。

・住井 啓子さん

1624年創業の「小丸屋」の10代目当主。江戸時代に原型をもつ「深草うちわ」を新しい感覚で蘇らせた「新深草うちわ」の開発を手掛ける。また伝統文化の発信基地として「小丸屋サロン」をオープン。京都の伝統と美意識の継承と発信に尽力している。

小丸屋住井:http://komaruya.kyoto.jp/

※取材協力:京王プラザホテル 営業戦略室 企画広報

・お知らせ

「芸妓舞妓を支える京の伝統美」

京王プラザホテル(新宿)では、2018年秋の限定企画として、京の雅を象徴する伝統工芸を紹介する特別イベントを開催。京友禅や西陣織、花簪など芸妓舞妓の伎芸たちが愛用の京都の伝統工芸に触れ、また花街の文化に酔いしれることができます。

2018年10月3日(水)~11月9日(金) 3階/アートロビーほか 【入場無料】

京王プラザホテル:https://www.keioplaza.co.jp/

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