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【海外ドラマ】笑って泣ける、プロレスに挑む負け犬たちの奮闘。

  • 2018.10.28
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賞レースを賑わせた海外ドラマの傑作・秀作を10本厳選する短期連載。第7回は、人生に行き詰った女性たちがプロレスで身を立てようと奮闘する「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」。丁寧に再現された'80sカルチャーも楽しい快作だ。

リング上でそれぞれのキャラクターに成りきり、ときには現実との関係性がクロスしながらバトルを繰り広げる親友同士のデビー(ベティ・ギルピン、左)とルース(アリソン・ブリー、右)。

「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」(2017年~)

1980年代のアメリカの女子プロレス界を舞台にした痛快コメディ。女優志望だが目が出ないルースは、一念発起して「型破りな女性」を求める女子プロレスをテレビ番組として放映するという企画のオーディションに参加する。集まってきたのは冴えない素人ばかりで、監督は”低俗の帝王”の異名を持つサム。人種も育った環境も、性格も年齢も異なる彼女たちに共通するもの。それは人生において、自分たちは”負け犬”だと強く感じていることだ。ルースを筆頭に、それぞれが自分のキャラクターを作り上げていきながら、慣れないプロレスの世界へ飛び込んでいく。

ルースたちが、「もうこれしかない」と必死の形相でキャラ作りに励む姿は、おかしくて痛すぎて、どうしようもなく泣けてくる。たとえば、アフリカ系アメリカ人のタミーは社会福祉制度を悪用してのうのうと暮らす黒人代表、インド系アメリカ人のアルシーは”レバノン人のテロリスト”という設定。ゾーイはわざとらしいロシア語訛りで資本主義を罵り倒すヒールとして、親友のブロンド美女デビーが演じるヒロイン”アメリカの母”をひたすら盛り立てる。ばかばかしくもあるが、自分の見た目やルーツを誇張して演じながら、彼女たちは社会から受けている差別や偏見、自らのコンプレックスやトラウマと向き会うことに。

ケンカしたり意見が割れることがあっても、強い絆で結ばれていく「GLOW」のメンバーたち。

1980年代に実在した女子プロレスのテレビ番組「GLOW」と、その舞台裏を追ったドキュメンタリーにインスパイアされた本作は、レーガン政権下の「強いアメリカ」の時代を象徴するカルチャーも満載。グリッター、レッグウォーマー、肩パッドにシンセサイザー、そしてケニー・ロギンス、シンディ・ローパー、ヴァン・ヘイレンらの当時のヒット曲の数々が否応なしに気分を上げてくれる。しかし、光が強ければ強いほど影が生まれる。輝かしいアメリカの栄光とは裏腹に、何者かになろうと必死にもがく人々の、文字通りの汗と涙の人生模様は万人の胸を熱くする。

金のために仕方なく監督を引き受けたサム(マーク・マロン)。最初はやる気がなかったが、ルースたちの良き理解者となっていく。

「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」シーズン1予告編

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