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【海外ドラマ】戦場帰りのヒットマン、演劇の面白さに目覚める。

  • 2018.10.27
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高い評価を得るここ数年の海外ドラマの中からおすすめを紹介する短期連載の第6回は、今年のエミー賞で主演男優賞など3部門を獲得したダークコメディ「バリー」。ふとしたことから演劇と出合い、演技と裏社会の間で揺れ動くヒットマンの日々を描く。

冷酷なヒットマンでありながら、演劇に魅了されていくバリー。「サタデー・ナイト・ライブ」のビル・ヘイダーによる、おかしみと凄みのある役作りが秀逸。photo:© HBO/Everett Collection/amanaimages

「バリー」(2018年~)

アフガニスタン帰還兵の元海兵隊員で、父親の友人の紹介で殺しを請け負っているヒットマンのバリー・パークマン。殺しの依頼があってロサンゼルスに向かうが、ターゲットを観察するうちに、成り行きから俳優の卵たちが集う演劇クラスに参加し、演技にのめり込んでいく。今年のエミー賞で主演男優賞ほか3部門を受賞した本作は、ブラックユーモアに彩られたシュールな世界観が独特の味わいを醸す異色のシリーズだ。

戦地でのトラウマに苦しみ、孤独で鬱々とした人生に、”演じる”ことの喜びを知り希望が芽生える。同時に、これまでヒットマンの任務は冷徹&完璧に遂行してきたが、人間らしい感情の揺れから詰めが甘くなる。演劇仲間との交流、愛する女性との出会いなど人生が良い方へ向かうほどに、ヒットマンとしてのバリーは泥沼にハマり、裏社会との関係はダーク度を増していくという皮肉。ふたつの人生を生きるバリーにとって、本当の自分はどちらのバリーなのか?被害者でもあり加害者でもあるバリーは、善人なのか悪人なのか。1度でも罪を犯した者は、人生をやり直すことはできないのか?理想と現実、虚実が入り混じり、やがては逆転するかのような混沌とした奇妙な感覚が本作の醍醐味だ。

演劇講師ジーンを、ひょうひょうと演じてエミー賞コメディシリーズ部門の助演男優賞を受賞したヘンリー・ウィンクラー(左)。同賞で主演男優賞を受賞したビル・ヘイダーとのやりとりも絶妙だ。photo:© HBO/Everett Collection/amanaimages

番組の生みの親でプロデューサーにして、監督・脚本・主演を務めて脚光を浴びているのは、「サタデー・ナイト・ライブ」でよく知られる俳優でコメディアンのビル・ヘイダー。無表情な中にも、おかしみと凄み、哀れみと狂気を伝えるバリーは、同情と共感を誘うと同時に、恐ろしくヒヤリとさせる瞬間も。このほかに類のない役作りはヘイダーの真骨頂と言えるだろう。また、秀作コメディ「アトランタ」ほかで、ドナルド・クローヴァーとのコラボレーションでも話題のヒロ・ムライがシーズン1では2エピソードを監督。旬の才能が集結した本作は、アメリカのコメディーの幅の広さと奥深さを伝えて新鮮な驚きを与えてくれる。

「バリー」予告編

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