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いよいよ本格的なシーズン開幕!フィギュアスケートの国内大会情報をご紹介!(シニア女子、東京ブロック編)

  • 2018.10.26
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今回は東京ブロック、中部ブロックを中心に、シニアの注目選手を取り上げたい。今週末にグランプリシリーズ初戦を迎える選手達に注目が集まるのはもちろんだが、一方で東日本の女子では、全日本選手権への出場争いが熾烈を極めている。また、東京ブロックの男子においては、今季で引退する選手が多数おり、彼らの最後のシーズンへ懸ける思いも紹介したい。

【写真を見る】シェイリーン・ボーンの振付による、”エナージア”

世界選手権メダリストがまさかの不調。樋口新葉

樋口新葉、東京ブロックでのショートプログラムの演技
中村 康一(Image Works)

世界選手権のメダリストが、不調にあえいでいる。東京ブロックでのショートプログラム、にわかには信じられないような出来栄えだった。練習の段階から3+3のコンビネーションに挑まない。3ルッツ+2トウの予定で跳んだ、最初のルッツで転倒。次のフリップジャンプも着氷が悪く、コンビネーションにしてリカバーすることができない。一体どうしてしまったのか。

「関東サマートロフィーのころからジャンプの軸が曲がってしまうようになりました。世界選手権の時のような感じが戻ってきていません」。

本人は「怪我というほどではない」と言うが、右足の甲に痛みがあり、思うような調整ができていないようだ。「怪我が原因で不調になったのではなく、軸の曲がったジャンプを跳び続けたことで痛みが出た」との言い回しで、現在の状態を説明していた。「全日本までに調子が上がればいいと考えています。焦りはありません」というが、グランプリシリーズでは最低限のアピールはしなくてはならない。調整は間に合うのだろうか。

「今年はプログラム作りが6月、7月になってしまい、練習が足りなかった面もあります。プログラムとジャンプがまだ合っていないんです」。

確かにジャンプの調子だけではなく、プログラムの仕上がり不足の面もあるだろう。ただ、このショートプログラムは仕上がれば素晴らしい出来栄えになると感じる。とても魅力的な振付だ。

翌日のフリーでは一転、大きなミスなく終えることができた。

「軸を真っ直ぐにする意識で臨みました。今のこの最悪の状況としては、一番いい演技ができました。グランプリシリーズまでにジャンプの軸を戻したいし、3+3も取り戻したい。自信につながる試合になりました。もし昨日も今日もダメだったら、自信をなくしていたかもしれません」とショートプログラムの後とは打って変わって、明るい調子の発言が聞かれた。とはいうものの、グランプリシリーズについてはとても強気なことを言える状態ではないようだ。

「今の状況で表彰台など高い目標を考えても、気持ちだけで体がついていきません。現実を見て、できることを一つ一つ頑張っていきたいです」。

先ほど終わったスケートカナダの前日練習。午前の練習ではショートプログラムを滑ったのだが、相変わらずジャンプが安定しない。ただ曲かけ後に岡島コーチが少しずつ場所を変え、さまざまな角度から樋口新葉のジャンプをチェック。「私が頼んで、場所を変えて見てもらったんです」と、選手本人からのリクエストだったそうだ。その甲斐あってか徐々にジャンプが整い、終わりごろには真っ直ぐな軸の3ルッツを跳べるまでになった。そして午後、この日2度目の公式練習ではフリースケーティングを滑った。午前とは打って変わってジャンプが安定し、3+3も何度か降りるまでになった。セカンドトリプルは回転不足気味だったが、着実に良化しているようだ。明日の試合本番が楽しみになった。

シニア転向が飛躍の契機となるか。松原星

松原星、東京ブロックでのショートプログラムの演技
中村 康一(Image Works)

昨シーズン、初のジュニアグランプリ出場を果たした松原星だが、今年からシニアに転向することになった。ジュニアグランプリの選考会には出たそうだが、「仮に選考に通ったとしても、国内はシニアに上げるつもりでした」と、予定通りの転向のようだ。夏季フィギュアで話を聞いたところ、「最近は中野先生のチームの合宿に行っていました」と、意外な縁を頼って練習をしていたのだという。三原舞依、坂本花織、佐藤洸彬と一緒に合宿したのだそうだ。

「止まったところからジャンプを跳ぶ練習をしたんですが、これが苦手できつかったです」「リンクを1周する間に12本ジャンプを跳ぶんです。いきなり『はい、トリプルトウループ』とか(笑)」。

これは松原選手にとっていい練習になったようだ。この成果かは分からないが、サルコウ+トウの精度が上がった印象だ。以前は暴走しないように「スピードをあえて抑えている」と話していたが、最近は押して跳ぶ練習を心掛けているという。今季のSP、“アナスタシア”は、「昔はよかったな、というもの悲しい曲」と捉えているそう。以前は明るい、アップテンポな曲が似合っていた印象だったが、最近はこういう曲の方が好きなのだという。今はスケートが楽しいそうで、「スケート人生もあと4年なんだから、楽しまなきゃ」という気持ちになったとのことだ。演技の雰囲気が大人っぽくなった印象だが、それを伝えると、「自分では自覚がない」と笑っていた。

迎えた東京ブロック、松原星は樋口新葉に次ぎ、2位に入賞することができた。ショートプログラムではフリップで転倒してしまったが、その後は立て直し、フリーではノーミスの素晴らしい演技を披露した。今季は新ルールの影響が懸念されるが、松原選手も回転不足に対しての判定が厳しいと感じているようだ。

「ぴったりのつもりで降りると回転不足なんです。余裕をもって降りないとダメです」。

特にフリーの後半、疲れてきた場面では、しっかりと回らないと回転不足と取られてしまうとのこと。シニアに上がって30秒伸びたフリーについては、スタミナ面の問題は感じていないようだが、「コレオがピンと来ないんです」と独特の表現で説明してくれた。コレオシークエンスはスケーティング技術、独創的な表現を用いて加点を狙うエレメンツだが、まだ表現の仕方を試行錯誤している段階のようだ。

そのフリーはノーミスの素晴らしい演技だったが、「これを東日本選手権でやらなければ意味がないので、早く東日本が来てほしいです」と、フリーの仕上がりには自信を持っているようだ。実は今年、東日本の女子選手にとって全日本出場は至難の業なのだ。そもそもの話として、東日本から全日本への出場枠は女子の場合、5枠しかない。昨年の全日本での東日本勢の成績が悪かったため仕方ないのだが、そこに本田真凜が移籍してきた。樋口新葉、本田真凜はグランプリシリーズ出場のため、東日本選手権を免除となっているので、この2名を除いた3枠、これが東日本選手権から全日本選手権へと駒を進められる人数なのだ。松原星も、東京ブロックのようなショートでのミスをしていては全日本出場を逃しかねない。

取材の最後に「東日本では表彰台の真ん中に立てるように頑張ります」と意欲的なコメントを聞かせてくれたが、実はこの発言の前に「新葉ちゃん、出ないですよね?」と周りに確認をしていたのだ。新葉ちゃんが出ていても真ん中に立つ、ぐらい言わなきゃ、と発破をかけると「いやぁ、それはさすがに及ばないので」と途端に弱気なコメント。この発言をコーチたちに伝えたところ、皆、爆笑していた。こうした率直なところが松原選手の魅力であり、ただ同時に乗り越えてほしい部分でもあると感じる。練習ではとにかく上手な選手。練習でのパフォーマンスが試合で出せるようになれば、全日本選手権出場どころか、もっと上を狙えるはずだ。

今年も全日本の舞台へ!佐藤伊吹

佐藤伊吹、東京ブロックでのショートプログラムの演技
中村 康一(Image Works)

ループジャンプを得意とする佐藤伊吹選手。今年はそのジャンプがしっかりと安定した印象を受ける。回転不足を改善するために、ジャンプを高くすることに主眼を置いて練習してきたのだという。昨年は初めて全日本に出場したものの、大舞台での緊張のためか、思うような演技ができなかった。

「全日本では周りとの差を痛感しました。今年は雰囲気に負けずに上位に入りたいです」。

今季のショートプログラムでは初めてのジャズに挑戦する。横谷花絵コーチによる、とても素敵な振付だ。まだまだ動きに改善の余地はあるというが、とても気に入っている様子。ただ、彼女もまた東日本選手権のハードルの高さを痛感している。

「全日本に出たいという気持ちが強いんです。今のままでは危ないと思っているので、しっかり練習したい。もっとスピードを上げて、緊張していても自信を持って演技できるようになりたいです」。

東京ブロックでは、PCSが低めだったため、見た目の印象ほどの点数が出なかった。「緊張してスピードがなかったことが原因」と自己分析していた。またフリーでは後半のジャンプで回転不足を取られたこともスコアに影響した。東日本選手権に向けて改善を期待したい。

彼女の演技を全日本で観たい!永井優香

東日本選手権では、ぜひノーミスのショートを披露してほしい
中村 康一(Image Works)

今季、東日本選手権の壁に立ち向かうもう1人の選手が、永井優香だ。プログラムはショート、フリーともに本当に素敵で、是非全日本の舞台で観たいものだ。

ショートプログラムの“リバーダンス”は今までの彼女とは違う雰囲気だ。佐藤操先生の振付で、同じ振付師が友野一希のフリー、永井優香のショートと、1シーズンに2つのリバーダンスを振り付けたことになる。

「アピールする部分が難しくて、振付の時にもうまくいかなくて操先生に笑われてしまった」とのことだが、夏季フィギュアの演技では表情が明るくて楽しそうだった。「毎日、楽しくやっています。でもこのプログラムは楽しそうにやっちゃいけないと言われているので、そういう意味ではダメですね 」。

ただ、迎えた東京ブロックのショートではミスが続いてしまった。

「ひどかったです(苦笑)。その一言に尽きます」。

最初のルッツをパンクし、スピンの最中も足が震えていたという。東日本選手権のことが心理的に重荷になっている面もあるようだ。

「東日本のことを考えると不安になって焦ってしまったりしていました。東日本までしっかり練習して、あとはどうにでもなれ、という気持ちで臨みたいです」。

リバーダンスの表現について、振付師の佐藤操からは「切れてるぐらいの雰囲気でやって」と言われているそうだ。楽しそうに滑っていた夏季フィギュアと違い、この日はジャンプを失敗したことで軽く切れてしまって、そういう雰囲気を出しやすかったという。振付師の意図を汲んだ、鬼気迫る表現だった。ただ、ジャンプが成功してもその感じでやってほしいものだ。

今季のフリーは鈴木明子振付の“シンデレラ”だ。

「曲調的には自分が踊りやすいかな、と思って選んだんですが、ショートの“リバーダンス”と違って印象的な部分が少ないので難しいです」。

東京ブロックでは、奇しくも現役時代にこの曲を演じた中野友加里がジャッジパネルに入っていた。そのことに触れると、永井選手も中野友加里の“シンデレラ”を映像で見て参考にしているとのことだ。

東日本ではショートをノーミスで乗り切らないと厳しい戦いになる。全日本への切符、3枚を争うのは、東京の松原星、永井優香、佐藤伊吹、そして東北の廣谷帆花、関東の河西萌音。この5選手が有力だろう。もちろん大沢寧子、大矢里佳にもチャンスはあるはずだ。東日本選手権は息の詰まる戦いになりそうだ。(東海ウォーカー・中村康一(Image Works))

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