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うつわディクショナリー#38 松浦コータローさんのうつわをハレの日も普段の日も

  • 2018.10.11
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伝統的な仕事と自分らしい絵付けを軽やかにミックス

陶芸家の松浦コータローさんの絵付けのうつわは、華やかでもあり、カジュアルでもあり、古典的でもありモダンでもあり。ハレの日にも普段にも使いたくなる絶妙な存在感。その秘密は、うつわの「肌」の作り方にあるようです。

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—松浦コータローさんといえば、古典的な文様に、赤や黄色、グリーンなどモダンな色をきかせた絵付けが特徴的です。

松浦:僕は、京都の職業訓練校の図案科で勉強をした後、京焼の窯元で7年間、絵付け師として、何百といううつわに同じ絵付けを施す仕事をしていました。呉須絵と色絵を混ぜて配置したり、黄色やグリーンを使う作風は、京焼にあるものですが、京焼は料亭などハレの場で使われるきっちりとした絵柄が多いんですね。でも僕は「毎日の普段の食卓で使える絵付けのうつわ」を作りたいと思ったので、改めて成形を勉強し独立して、いまのようなすこしカジュアルな作風になりました。

 

—成形から自分でするようになって気づいたことはありますか?

松浦:土のブレンドからこだわるようになりましたね。古伊万里や中国のものなど、古いものから写すこともよくするのですが、骨董を見て僕がいいなと思っているのは、かたちや絵付けよりもむしろ質感なんですよね。くすんだような色味だったり、磁器でもざらっとした質感だったり、古いものならではのそういう風合いというのに人は癒され、いいなと思うのではないかと。そういうものを表現できたらと思うようになりました。

 

—かたちや色よりも肌合いが大事ということですか?

松浦: 大事なのは、土と釉薬の相性だと思います。それが絵付けにあっていると思い描いた色が出ます。水墨画を習ったことがあるんですが、その時に、何に描くかによって絵の出方が違うということをすごく実感したんですね。和紙に描く絵というのは、紙の違いで、描き心地もにじみ具合も全然違ってくる。どういう絵になるかが、全く異なるんです。土、釉薬、絵付けの関係にもそれが言えるのかなと。

 

—まるでメイクのようですね。ベースメイクの丁寧さが仕上がりを左右する。

松浦:そうかもしれませんね。ベースが大切。だから土のブレンドと釉薬の相性の研究は、こまめにしています。釉薬によって、肌にプツプツとした凹凸がでてそれが表情になったり、光の反射も変わって、ちょっと気になったり、手に取りたいと思わせるものになるんだと思うんです。より良い質感を常に探そうとしているので、同じかたちや絵付けの作品でも、肌の作り方は、その都度違いますね。いまは、渋めの透明釉が気に入っているので、それに合わせて、土は白っぽいものをブレンドしたり。そうすることで、呉須(青)が綺麗に出るようになって、青だけを使う染付の作品も増えてきました。

 

—絵付けで心がけていることはありますか?

松浦:昔から絵は好きだったんですが、何度も線を引いて輪郭を探っていく西洋式のデッサンには馴染めなくて。日本画のように1本の線で迷いなく描くのがかっこいいなと思います。動物の絵を描く時には、自分が本当に描きたいなと思った時、ノッている時にするようにしているかな。その方が、動物の顔の表情も良くなるので。

 

—どんなものを作りたいと思っていますか?

松浦:どんなものを作りたいという前に、自分が一生楽しんで作れるようにしたいと思っているかもしれません。下準備を丁寧にして作る環境を整え、みなさんに求められるものを作れる状態にしておくこともそうですし、焼物をやっていない時の時間の過ごし方にも気を配りたいと思っています。気持ちよく、わくわくしながら作ったものってその感じが作品に出るんですよ。僕は伝統に即した仕事をしていて、技法的に変わったことをしているわけではありません。その分、作る時の各工程へのこだわりが積み重なって、自分の個性になっていったらいいなと思います。

 

※2018年10月13日まで千鳥 USTUWA GALLERYで「松浦コータロー・ナオコ 二人展」を開催中です。

 

今日のうつわ用語【京焼・きょうやき】

京都で焼かれた焼物の総称。近世初頭以来の京窯で生産されたものをいい、初期は清水焼、八坂焼など。次いで野々村仁清、尾形乾山ら作家が登場し、色絵陶器や琳派風の意匠の陶器を制作したことから絵画的手法が生まれる。その後は伊万里磁器の影響を受けた磁器が登場し、染付、赤絵などが好んで作られた。

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