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離乳食の栄養「ちゃんと足りてるか不安…」いつから、なにを、どれくらい?【ママ管理栄養士が解決「離乳食のお悩みあるある」 第3回】

  • 2018.10.1
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母乳やミルクしか口にしていなかったわが子が初めて離乳食を食べた…! そんな姿に感動を覚えてしまう人も多いのではないでしょうか?

成長するにつれて食べられる食材や量も増えていきますが、なかには「これで足りているのだろうか?」あるいは「食べすぎなのでは?」といった疑問や不安を感じるママも出てくるようです。

そこで、小児栄養学の専門家として子どもの栄養に関する書籍を数々監修されている上田玲子先生に、離乳食に関する疑問や不安、その付き合い方や対処法について、よりくわしくお話をうかがいました。




お話をうかがったのは…

管理栄養士
上田玲子先生


帝京科学大学こども学部幼児保育学科教授・学科長。小児栄養学、母性栄養学、栄養教育学、公衆栄養学などさまざまな栄養に関する学問を学び、栄養コーチングの手法を開発。食を通して子どもの幸せに関わりたいと活動している。



■赤ちゃんの離乳食「栄養は足りている?」目安になるのは…

――離乳食が始まったものの、ほとんど食べてくれなくて栄養が足りているか心配…というママが、私の周りでも何人かいました。こうした心配を解消する手段というものはあるのでしょうか?

上田先生:まずは「本当に栄養が足りていないのか」を客観的にチェックしてみる必要がありますね。「発達曲線カーブ」というものをご存じのお母さんも多いと思います。

これは、母子手帳などにのっているものなのですが、グラフに子どもの身長・体重を記録していくことで、栄養状態がどうなのかをチェックすることができるものなんですね。

――これ、私も記録して成長の様子を確認していました。発達曲線の範囲のなかに子どもの身長、体重がおさまっていれば「問題なし」という見方でいいのでしょうか?

上田先生:いえ。実はチェックしてほしいポイントというものがあるんですね。身長と体重が発達曲線の範囲のなかにおさまっていればOKというわけではなくて、見てほしいのはその「経過」です。

――月齢ごとに記録した値が連続してどのようなラインを描いているか、ということでしょうか?

上田先生:そうです。例えば、ある時期からある時期にかけて急激に上昇していたり、反対にガクンと下降していたり…。そうした動きが見られたら、ちょっと注意が必要です。



なぜかというと、身長・体重の推移は発達曲線のなかでゆるやかに上昇していくのが普通なんですね。だから、急激に上昇しているのは代謝異常等の病気が隠されている場合があるし、急激な下降や横ばいというのも成長期の赤ちゃんにはありえないことなので、とても心配です。その場合は専門家に相談してみるようにしましょう。

――急な変化は思っている以上に深刻な場合もあるんですね…。

上田先生:そうなんです。反対に、範囲内ぎりぎりでも、そのカーブのなかにはいっていて、ラインにそって上がっていく場合は心配ありません。

発達曲線カーブは子どもの成長が目で見えるから、親の楽しみでもあると思うんです。だから、必要以上に心配することはありませんが、急激な変化がないかどうかは確認してほしいんですね。そういった点で、これまでとちょっと見方を変えてみるといいと思います。

■離乳食「食べ過ぎても不安、食べなさすぎも心配」そんなときは…


――私の友人の子どもは、とにかくお米が大好き。なくなるとすぐに欲しがるのであげてしまうそうですが「食べすぎ」が心配だと言っていました。こんなふうに食べすぎ、あるいは逆に食べなさすぎというのもママは心配だと思います。これはどうとらえていけばいいのでしょうか?

上田先生:そうですね。ママにとっては心配になりますよね。でも大丈夫ですよ。子どもの「食べた」「食べない」の量は、1カ月単位で考えていけばいいんです。

――1カ月単位でいいんですか…?

上田先生:そうです。例えば、1カ月ずっと食べ続ける、反対にずっと食べない、なんてことはあまりないと思うんです。「ここ1週間よく食べるなぁ…」「先週からちょっと食欲が落ちてるかも?」と思うことはあっても、1カ月前と比べたとき、体重が増え成長曲線に沿っていれば大丈夫です。心配しすぎてママが落ちこむことはないんですよ。




■月齢別の離乳食1回分「どんなバランスでどれくらい?」

――私の子どもが離乳食期の頃、身近に同じくらいの月齢の子がいなくて、1回分の食事量がよくわからなかったんです。先生の『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』では、月齢別に1回分の食事内容と量、大きさ、かたさの変化の目安が写真で掲載されていますね。すごく参考になります。

上田先生:そうですね。こうして写真で見るとわかりやすいですね。

――食事内容について月齢別にくわしくお聞きしてもいいですか?

上田先生:まず生後5~6カ月頃のスタート時は、10倍がゆのすりつぶしから始め、だんだんつぶし方をあらくしていきます。

1週間ほどしたらペースト状にした野菜かフルーツ、それに慣れたら豆腐のすり流しを加えていきますが、離乳食を始めたばかりなので、ひとさじずつゆっくり増やします。スタートして1カ月たった頃には、これぐらい食べられるでしょう。



写真では、1品ずつお皿に取り分けてますが、3週間ぐらいして慣れてきたら何品かを混ぜてあげてもいいですね。別々だと食べなかったのに混ぜ合わせたら食べることもありますから。

例えば、おかゆ単体では食べなくても、かぼちゃのほんのりした甘さが加わると喜んで食べる、なんてこともあるんですよ。

――そうなんですね。では、7~8カ月になると、どんな違いが出てきますか?

上田先生:7~8カ月の頃になると7~5倍がゆ、野菜をマッシュ状につぶしたもの、豆腐、魚、肉、納豆などをやわらかく煮てあらくつぶしたものを、舌とあごでつぶして食べるようになります。

この頃は同じものばかりを食べる「ばっかり食べ」が出てきたりしますが、これも心配することありません。



ばっかり食べも、ある時期になるとあきて、急にほかのもの食べるようになったりするので、いろいろなものを食べさせようと固執しすぎず、楽しく食べられるよう雰囲気づくりに目を向けてみるといいかもしれません。

――ばっかり食べ、私の息子のときもありました(涙)。あんまり心配しすぎることもなかったんですね。

上田先生:そうですね、大丈夫です。それで9~11カ月になると3回食になるので、食べ慣れたものを中心に量も徐々に増やしていきます。かむ力を育てるために、メニュー例のようにかたさ、大きさの変化を考え、5倍がゆ~軟飯やゆでた野菜、お豆腐炒めなどをイメージしてみましょう。



上田先生:そして1歳~1歳半で軟飯~ごはん、ソテーした野菜、豆腐のステーキ、固形のフルーツなどをお手本に。大人の料理から取り分けるときは、味つけが濃い場合、2~3倍ほどに薄めます。味がちょっとあるくらいの「薄め」が赤ちゃんに最適な味つけです。



――なるほど…。大人の食べる食事に近づいていくので味つけも大人に近づけたくなってしまいますが、見た目が大人の食事に近づいたからといって、同じ味つけでいいわけではないんですね。

上田先生:そうなんです。それと注意してほしいのが「かたさ」です。生後5~6カ月の頃と1歳~1歳半の頃の食事を比べると、食材が固形化していきますよね。そのため、どんどんかたいものを与えていいと思うかもしれません。
でも、まだ奥歯が生えていないので、「かたいもの」は食べられないので注意しましょう。

2歳半~3歳くらいで20本の乳歯が生えそろいますが、それよりも前にかみ切れない食材を与えると丸のみしてのどにつまらせたり、その危険を感じて不安から口から出ししまうことがあります。

赤ちゃんが「食べてくれない」のは、単純に味が嫌いという以外に「かみ切れなくて不安を感じて」ということがあるんですね。

――そうだったんですね…。そういった理由もあったとは…。

上田先生:乳歯が抜け始める時期もまた咀嚼(そしゃく)力が落ちるので、お肉のこま切れ肉などが食べにくくなります。子どもが、ちょっと前までは食べていたのに急に食べなくなった…というのは、歯がグラグラして生え変わっている時期だから、ということもあるんですよ。

大人と同じ咀嚼(そしゃく)力をもって問題なく食事がとれるようになるのは、実は16歳くらいといわれています。

――そ、そんなに遅いんですか…!

上田先生:そうなんです。大人と同じようにかめるのはそのくらいからです。だから「食べられるようにするため」食材の繊維を断ち切る方向で薄切りにしたり、かたまり肉なら叩いたり、さいの目状に細かく包丁で線を入れたりしてあげてほしいですね。

手間はかかってしまうけれど、飲みこめない事情があることを知っておいてほしいと思います。

――それは知らなかったです…。おいしくないから食べないんじゃなくて、かめなくてつらいから食べないってことも頭に入れて、子どもの食事づくりをしていこうと思います。

発達曲線カーブの新たな見方や、食べすぎ、食べなさすぎも1カ月単位で見ていくこと、月齢別の食事内容や量など、栄養指導ではなかなか聞けない内容ばかり。

これから離乳食に挑戦というママや、離乳食期真っただ中だけれどうまくいかない…とお悩み中のママにとって、価値ある金言ばかりだったのではないでしょうか?

離乳食が終わり、大人と同じような食事が食べられるようになったからといって、咀嚼(そしゃく)力まで同じになったわけではないということは、小学生の息子を持つ筆者にとっても新しい発見でした。これまで食事面で息子に苦労をかけていたのかも…と泣きたくなりましたが、上田先生からのアドバイスを元に、これからは子どもの咀嚼(そしゃく)力も意識しながら食事つくりにのぞめたらと思います。

参考図書:
『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』(主婦の友社)
監修/上田 玲子 イラスト/あらい ぴろよ 1,296円(税込)



子育て中に遭遇する離乳食の「どうしたらいいの?」にわかりやすくマンガで答える一冊。乳幼児栄養についての第一人者である上田玲子先生が監修し、ゆるかわ、ポップ系を得意とするイラストレーター・あらい ぴろよさんのイラストでママたちの素朴な疑問を解決してくれます。マニュアル通りにはいかない離乳食のリアルなモヤモヤ、不安にもあたたかく寄り添う、悩めるママの離乳食解決本。

(すだ あゆみ)

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