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「私を愛して!」セックスレス夫に怒りをぶちまける「やりすぎ美魔女」モンスター【リアル・モンスターワイフ、再び 第31回】

  • 2018.9.30
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夫の愛が冷めてゆく…それは、妻にモンスターワイフの影が見えるから…。



「いつまでも若く美しく」。それは女性の究極の願い。

そんな女性たちの願望を反映して、今やアンチエイジングは一大産業です。美容院やエステサロンのソファでめくる美容雑誌。息を飲むほど美しいモデルたちの笑顔…。

最新の技術・研究のおかげで、女性たちの「見た目年齢」はかつてないほどの若返りを実現しました。ついには「美魔女」と呼ばれる女性たちまで登場しました。

妻たちがいつまでも若々しく、かわいらしく、女性らしい…。そんな社会が到来すれば、私の人生テーマである「仲良し夫婦」の人口は確実に増えていくでしょう。

ところが残念ながら、女性なら誰もが持つこの「アンチエイジング願望」が暴走し出し、妻をモンスターワイフ化させてしまう恐れがあるのです。

「若くありたい。誰よりも美しくありたい」

そんな女心に、モンスターがつけ入るスキを与えないよう、今回ご紹介するケースを他山の石としてください。

■子どもが独立「残ったのはオバサン化した自分だけ」美魔女ブームにあせり…

「モダンセクシャル系モンスター やりすぎ美魔女」代表:翔子(仮名)49歳の場合

「え、この人が50歳? ウソでしょー!?」

リビングのソファでスナック菓子をつまみながらスマホをながめていた翔子は、一人で大声を上げてしまった。

1年前、長年使用していた「ガラケー」がとうとう故障。翔子はいらないと言い張ったが、次男の和明に「今どきガラケーなんてもう売ってないから」と説得され、新しく持たされたのがこのスマホだった。

少し前まで翔子のスマホは、ガラケーと同じように電話とメールにしか使われていなかった。ところが3カ月前、和明が大学を卒業して就職のために首都圏へ引っ越すと、ポッカリと空いた時間と心の隙間を埋めるように、翔子はスマホが手放せなくなった。

翔子は21歳の時に、同い年の正人と結婚。2人の息子に恵まれた。正人は真面目な働き者。しかし小さなメーカーに勤める夫の収入だけでは、大学卒業まで続く息子2人分の教育費などをまかなうのは難しい。そう考えた翔子は、若い頃からあらゆるパートに精を出した。5年前からは近所のスーパーで、週に5日働いている。

そんな翔子の努力を知ってか知らずか息子たちは立派に育ち、2人とも国公立大学に進学してくれた。そして兄に続いて優良企業への就職を果たした次男も、ついに実家を巣立っていったのだった。

長い間、子ども中心に過ごし、夫よりも子どもたちと一緒に過ごしてきた翔子。2人の子どもが独立した今、家での時間をどう過ごしていいか分からない。夫と話をしようにも、息子たちの近況やテレビニュースくらいしか話題がなく、会話が続かない

そんな時、次男が残していってくれたスマホが目に止まった翔子。彼女は驚いた。

こんな小さな携帯ひとつで、あらゆる情報が瞬時に手に入る。ネット上には料理のレシピにダイエットのエクササイズ、あらゆる情報があふれている。しかもそれらが全部タダ。翔子は一気にネットサーフィンのとりこになった。

そんなある日。健康に関する情報を探していた翔子は、とある美容サイトにたどり着いた。そこで彼女は耳慣れない言葉を目にする。

「美魔女…?」

そこには女優かなにかのような、華やかな女性の笑顔。その横にはひとこと、「私、50歳に見えますか?」

「50歳って…私より年上!?」

翔子は衝撃を受けた。そして思わず、リビングの鏡の中の自分の顔をのぞき込む。…スマホの中で微笑んでいるこの女性と私は、まるで別の生き物だ。

これまで家事や育児とパート仕事ばかりの生活で、自分の外見だの美容だのといったことは、気にかけたことすらなかった。けれど特に根拠もなく、自分の見た目は「年相応」だろうと思っていた。ところが、私が忙しく日々を過ごしているうちに、「年相応」などという基準はなくなってしまったらしい。

そう思ったらなんだか急に、翔子は自分のたるんでくすんだ肌、最後に美容院に行ったのがいつだったか思い出せないほどのバサバサ髪を、とてもみじめに感じた

「こういう人たちってどうせ、ものすごいお金持ちの奥様とかなんでしょ。庶民は足を踏み入れることもできないような、会員制高級エステとか? そんなところの化粧品ばっかりそろえてるのよ。そりゃあ金に糸目をつけなければ、美しさも買えるってもんよね…」

くやしまぎれにブツブツ言いながらスマホをいじっていた翔子の指が、ピタリと止まった。

「奇跡の美魔女・麗子さんプロデュースのコスメの購入はこちらから…? え、なに、この人が使ってる化粧品が、買えるの? それもスマホで?」

翔子は思わずネットショップのページへと飛び、「おためしセット」の値段を確認してしまう。

「2週間分が3,000円って、高い! いつもドラッグストアで買ってるオールインワンジェルは1,000円しないし、2カ月はもったわよね。お得なセットで3,000円って、高すぎるわよ!」

そう思いショップのページを閉じようとした翔子だったが、ふと考えた。これまで和明にかけてきたお金、これからはある程度自由になるのよね…。

次男の引越しがすんで以来、翔子の銀行口座の残高は増える一方だった。パートとはいえ、週に5日働いていればそこそこの額が稼げる。老後に備えるためにも、もちろん給与のすべてを「おこづかい」として使えるわけではない。

けれども、これまでなんだかんだと息子のために消えていったお金の一部を、自分のために使ったってバチは当たらないだろう。これまでずっと、家族のために頑張ってきたんだから…。

それでもまだ躊躇(ちゅうちょ)している翔子の背中を、スマホで微笑む美魔女の麗子さんが押した。

「私が特別なわけではありません。丁寧なお手入れを続ければ、あなたの中の若々しさや美しさも、必ず目を覚まします」

「…よし!」

翔子は「購入」ボタンをクリックした。




■美魔女活動に精を出す妻「若さを取り戻したい!」しかし、夫は無関心…



その日から翔子の生活は一変した。

ヒマさえあれば、スマホで美魔女情報探し。彼女たちは、その実年齢がとても信じられないほど若々しく、かわいらしい。私だってもっと若ければ、こんな服を着てみたかった。こんな髪型にも挑戦してみたかった。美魔女たちは翔子がそんな風に憧れるスタイルを、年齢にとらわれず自由に楽しんでいるように見える。

そんなスマホの向こう側の美魔女たちを連日ながめているうちに、翔子は自分の人生は間違っていたのではないかという絶望感にさいなまれ始めた。

私はずっと家事と育児に追われて、一番きれいな時期、楽しい時期を、これっぽっちも楽しまずに年をとってしまった。体重もシミもシワも、白髪までどんどん増えて、花柄のワンピースもピンクのミニスカートも、明るい色のゴージャスな巻き髪も、私にはもう無理…。心を押しつぶすような後悔の念が、翔子に重くのしかかる。

「今から、少しでも若返りたい

そう切望した翔子は、「有名美魔女」オススメの商品とあらば、化粧品であれサプリメントであれ飛びつくようになった。当然、パートの給与はどんどん消えていくため、それまでは「家庭第一」と断っていた週末の出勤や遅番も、翔子は引き受けるようになった。さらにダイエットのために、毎日最低1時間のウォーキングも開始した。

使える時間とお金を一気に美容に傾注した甲斐あって、翔子の体重は順調に落ち、肌や髪もツヤを取り戻し始めた。パート仲間たちは、すぐに翔子の変化に気づいてくれた。

「なんだか最近スッキリしたね!」
「お肌の調子が良さそう。化粧品変えたの?」

そんな言葉をかけられるたびに、翔子は幸福感に満たされた。結婚後すぐに妊娠。出産して以来ずっとあきらめてきたものを、私は今、取り戻している。そう思ったら、翔子の若返り熱にはもう歯止めがきかなくなった。

「私だって美魔女になりたい。若い頃にできなかったことを、今からだってやってみたい」

憧れの美魔女たちのブログやインスタグラムをくまなくチェックするのが、翔子の日課になっていた。彼女たちの生活の中に少しでもマネできそうなことを見つければ、すぐさま自分の日常に取り入れる。

近所の大型衣料品店で買っていたダボダボの部屋着は、丈の短い花柄のワンピースになった。「近いから」というだけの理由で10年以上通っていた美容院は卒業。ネットで見つけたおしゃれなヘアサロンで、カラーリングとパーマをオーダー。

ファッション雑誌など以前は買ったことがなかったが、今では毎月2冊以上を購読。それも「無難に年相応」な雑誌ではない。美魔女たちをマネて20代の女の子のようなかわいらしさを追求し始めた翔子は、20代向けの女性誌を読みあさるようになる。

美魔女たちがSNSで発信しているように、「愛され系」「艶っぽ系」に大変身して、夫ともラブラブ…というのが、翔子の思い描いたシナリオだった。

ところが…これだけ努力して成果を上げているにもかかわらず、夫の正人が翔子にほめ言葉らしきものをかけてくれたことは一度もない。

「お父さん、私8キロも痩せたのよ。部屋着だってすごくおしゃれに、女っぽくなったでしょ。お肌も髪も若返ったって、パート仲間にもほめられるのよ。なのにお父さんは、どうしてなにも言ってくれないの?」

夫が鈍感なタイプであることは、もうずっと前から分かっていた。でも、それにしたって…これだけきれいに、色っぽく若返ったのだ。面と向かってほめるのが照れくさいなら、ちょっと態度がやさしくなるくらいでもいい。

これまでの結婚生活で捨てざるを得なかった「オンナ」を、私は今取り戻そうとしているのだ。夫にも私のことを、ひとりの女性として扱って欲しい。美活に没頭する一方で、翔子のそんな欲求不満はどんどんふくらんでいった。




■夫とセックスレス「露出多めの下着やナイトウエア」で迫ってみたものの…



そんなある日、いつものようにスマホでアンチエイジングの特集記事を読んでいた翔子は、衝撃的な見出しを目にする。

「いつまでも若い女性は、ベッドでもいつまでも現役!」
「女性ホルモンの分泌を促進する『若返りセックス』!」

翔子は動揺しつつ、記事を読み進める。

「いくら努力してスタイルやお肌のコンディションを維持しても、セックスから遠のいてしまった女性には、女性らしい艶や潤いが足りません。
ベッドでもいつまでも『現役』の女性は、セックスなしでは醸し出せない女らしさ、色気をまとっています。そんな女性は、いくつになっても魅力的。セックスによって女性ホルモンの分泌が促進されると、女性は心も体も若返ります。セックスこそ、最高のアンチエイジングなのです」

翔子は愕然とした。どんなに時間とお金をかけて努力しても、セックスなしじゃダメってこと? もしかして、「美魔女」たちがあんなに輝いてどこからどう見ても年齢不詳なのは、セックスの効果? セックスこそ、アンチエイジングの決定打ということか…。

そこまで考えて、翔子は思考停止におちいってしまった。

セックスって、私もうどれだけしてないのかしら。次男が生まれてから、ほとんどしていない気がする…ってことは、20年以上!? 希望通り2人の子どもを授かって以来、セックスについて考えたことなんてなかった。でも美魔女たちは、40代、50代になっても「してる」ってこと?

セックスがアンチエイジングの最終兵器になるというのなら、絶対に試してみなければ。「ラブラブ夫婦」への突破口も、ここから開けるかもしれない。翔子は夫をベッドに誘う決意をした。

金曜日の夜。それほど遅くなる前にベッドに入った翔子は、夫の背中に手を置いて話しかけた。

「ねえ、お父さん…」

「あ?」

正人の声はすでに眠そうで、話しかけられて迷惑そうな様子。

「あ、なんでもない」

翔子はあわてて手を引っ込める。あまりにも久しぶり過ぎて、どこからどう話を切り出していいか分からない。どうしたものかと策をめぐらせていると、1分もたたないうちに夫の寝息が聞こえてきた。翔子は仕方なく、自分も眠りにつくことにした。

翌日。翔子はスマホとにらめっこしながら、「夫をさりげなく誘う方法」をリサーチしていた。「愛され妻になるための方法」といったホームページやブログが、山のようにヒットする。

「完全なマンネリ夫婦で色っぽい雰囲気にならないのなら、ナイトウエアを工夫してムードを演出?」

ナイトウエアって、パジャマのことでしょ? パジャマなんて私、ショッピングモールの福袋に入ってたのをなにも考えずに着てたわ…。

その記事には、ツヤツヤしたサテンのネグリジェの写真が添えられている。

かわいい…でもこんなの、若い子向きでしょ。あ、このページから、オンラインショップにジャンプできるのね。今ならセール中で4,000円? 私の年齢じゃムリかと思ったけど、家で、しかも夜しか着ないんだからいいかしら。それに、うちのお父さんは鈍感だもの。これくらい思いきらないと、気づいてもらえないかもしれないわ。

結局、翔子はその日、「おうちでもオンナに手を抜かない」「寝姿もセクシーにかわいく」というキャッチコピーのパジャマやネグリジェを3着購入した。すぐに購入した商品は届き、早速鏡の前で身に着けてみる。ダイエットの甲斐あって、体のラインがあらわになってももう見苦しいことはない。

お父さん、なんて言うかしら。翔子はドキドキしながら夜を待った。ところが…正人はネグリジェ姿の翔子をひと目見るなり、「なんだ、そりゃ」と眉をひそめた。

「ネットでね、セールになってたの。たまにはこういうのもいいかと思って…」

「いくら安くても、それはないだろ。そんなスースーした格好して、腹こわすぞ」

それだけ言うと、正人は翔子に背を向けて、いつも通りすぐに寝入ってしまった。そして、残念ながら購入した残りの2着についても、夫の反応は翔子の期待を裏切るものばかりだった。

「一体なんのつもりだ。風邪ひくぞ」
「年を考えろよ」
「悪趣味だな」

翔子はすっかり気落ちしてしまった。いい雰囲気になるどころか、夫は冷たい言葉でダメ出しの連発。悲しいと同時に、夫に対して腹も立った。

一体どうすれば、このマンネリを打開して、20年ぶりのセックスにこぎつけることができるのか…そんな悩みを抱えてスマホにすがりつく翔子の目に、今度はこんな記事が飛び込んできた。

「抱かれる女性は下着にこだわる」
「エロかわいい大人ピンクで、男性をトリコに」

そのページで紹介されているのは、ふんだんな黒のフリルで飾られた、ショッキングピンクのシースルースリップだった。

女の私から見ても、すごくセクシー…。こんな下着姿で迫られたら、男性なら誰でも心奪われるはず。気づいた時、翔子はすでに、そのスリップの「購入』ボタンを押していた。

今度こそイケるはず。この一着で、勝負を決める。翔子の意気込みにはすさまじいものがあった。

スリップが届いたその晩。翔子は早速これに身を包み、夫の布団に入っていった。正人の目は驚いたように見開かれている。でも、ここで尻込みしちゃダメだ。今夜こそ、20年ぶりのセックスに持ち込む。翔子の決意は揺るがなかった。

「ねえ、お父さん。私、最近きれいになろうとすごく頑張ってるのよ。結婚してから今までずっとバタバタしてて、そんなこと言ってる余裕がなかったけど…。それでね、お父さん。お父さんともまた…」

「おいおい、一体なにがどうなってるんだよ!?」

翔子の言葉をさえぎって、正人がほとんどどなるようにして言った。

お前最近おかしいぞ。なにがあったんだよ。突然、濃い化粧なんか始めるし、髪型も派手になるし、服やアクセサリーだって年甲斐もなく…。それにその格好。一体なにがしたいんだよ。どうしたんだよ、一体!?」

翔子は絶句した。

あんまりだわ。確かに私はもう20代じゃない。美容からもファッションからも、長年遠ざかっていた。だけど、私がそんな人生を送ってきたのは誰のせい? お父さん、あなたのせいでもあるんじゃないの? 私だってお金持ちの家の奥さんだったら、もっと若い頃から美容やファッションに気をつかえたはず。もしかしたら今頃は、「美魔女」のようになれていたかもしれないのに…。

私はずっと、家計を支えるために働きっぱなしだった。仕事で忙しいあなたの分まで、男の子2人の相手も一手に引き受けた。元気いっぱいの息子2人と外をかけずり回ってできた、シミやシワ。スーパーで買ったお菓子をドカ食いするくらいしかストレス解消法がなかったせいで、ついてしまった脂肪。

これまでずっと、こんなにも家族に尽くしてきたのに。それなのに…あなたは私の気持ちなんて、これっぽっちも分かってくれないのね。きれいになりたい、女性として扱われたいという女心を、そうやって踏みにじるのね。

気づくと翔子は、不気味なくらい静かな声で夫に語りかけていた。

家政婦にオンナもきれいさも求めない、年相応に老け込んでいけばいいって言いたいのね」

「は? 家政婦? 誰もそんなこと言ってないだろ」

「お父さんのせいよ!」

突然激昂した翔子に、正人は固まった。

「若い時にやりたいこと、なんにもできなかったのはお父さんのせいよ! 私はお金も時間も、ちっとも好きなように使えなかった。夫婦仲良く、なんて言ってる余裕もなかった。だから今からでもって思ったのに、そうやって私のことバカにして…。私の若さを返して! 私の人生を返してよ! お父さんとなんてもう一緒にやっていけない。離婚してちょうだい!」

ピンクのシースルースリップ姿で、泣き叫ぶ翔子さん。彼女の胸は、張り裂けんばかりに傷ついています。一方、夫の正人さんも、妻の変貌と突然の大爆発に唖然。妻に恐怖すら覚えています。

長年良妻賢母として家族を支えてきた翔子さんを、「やりすぎ美魔女」モンスターと化すまで追いつめたものとは、一体なんだったのでしょう。
次回、チェックテストとともに解説していきます。

(三松真由美)

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