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そうだ、“熱帯温室”へ行こう!【東京ボタニカルエクスプロラー モンステラ・マニアによる「熱帯温室マニア」Vol.1】

  • 2018.9.25
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そうだ、“熱帯温室”へ行こう!【東京ボタニカルエクスプロラー モンステラ・マニアによる「熱帯温室マニア」Vol.1】

2018.09.25

植物園の熱帯温室は異空間だ

デートスポットといって思い浮かべるのは、遊園地?水族館?動物園?それとも美術館?
「植物園の熱帯温室に行こう」と、彼(彼女)から誘われたら、あなたはどう思うだろうか。

植物園というと、水族館や動物園と比較して、どことなく地味な、見所のわからない施設と思う人も多いだろう。そんなところに行って草木を見ても、のんびりはできるかもしれないが、それなら代々木公園あたりを散歩するのと、別に違わないのではないか?と思われるかもしれない。実際、動物園や水族館が激込みの連休などでも、植物園は人が少なく、比較的ゆっくり見ることができる。

しかし私、モンステラマニアは断言する。植物園の、しかも「熱帯温室」は、水族館よりも動物園よりも、美術館よりも、どこよりも非日常的で、未来的で、エキゾチックな異空間、another worldを味わえる場所だ。

熱帯温室とはナンぞや?



歴史上、昔から人々は、温暖でジャングルのように木が生い茂り、いたる所に果実がなっているような楽園、「パラダイス」に憧がれるのではないだろうか?古今東西、数多くの映画の舞台としてもジャングルが登場して、心の奥底に潜む密林願望をかきたてたものだ。
温室は、まさにそんな異世界を鉄とガラスのドームに詰め込んだ、まさにパラダイスカプセルなのだ。
熱帯温室に行ったことのない人はびっくりするかもしれないが、温室の中では、熱帯植物が生い茂り、自然と同じような大きな岩や川、池や滝など、高低差のある地形がつくられている場所が多くある。温暖なジャングルにはヤシの木やタビビトノキのような20m以上もあるような植物や、マンゴー、パパイヤ、バナナのほか、見たこともないような珍しい色とりどりのフルーツ、そしていかにも熱帯らしい赤や黄色の原色の花や珍しいラン、ちょっと不気味な雰囲気を持った花などが咲き誇っている。南国の鳥たちが放たれていて、エキゾチックなさえずりを聞くことができたり、カラフルな蝶が飛び交っていたりするところもある。また、別の部屋では、珍しい大きなサボテンが群生する、乾燥した砂漠世界があったり、霧で覆われた熱帯地方の高山を再現されていたりする。透明なガラスで外界から守られた温室内は冬でも暖かく、まさにシェルター、楽園そのものだ。
動物園や水族館、美術館で絵を鑑賞するように額縁の中にいる動物や魚を観賞して歩くのと違って、熱帯温室は、空間そのものを体感できる点で大きな違いがある。水族館で言えば水槽のなかを魚と泳いだり、動物園なら、ライオンの群れのなかを歩いたりするようなものだ。もちろん温室の中では息ができるし、植物たちにおそわれることはない。

温室の始まり物語



最古の熱帯植物温室は想像以上に古い。諸説あるが、紀元前30年頃には、ローマ皇帝ティベリウスが温室の原型となるような光を通す薄い石板で覆った栽培室を作り、冬にキュウリを育てていたと言われている。また、産業革命以降、イギリス、ロンドンの“キューガーデン”の “パーム・ハウス”など現代にも通じるような温室が作られるようになった。大航海時代、ヨーロッパの各国では、“プラントハンター”と呼ばれる人たちが世界中からありとあらゆる植物を“集めまくっていた。産業革命によって可能になった鉄とガラスの巨大な温室に、集めた珍しい植物をそこに詰め込んだのだ。

しかし、この時代のプラントハンター達の使命は、「珍しい植物を集める」という単純なものだけではない。 最初は薬草や食物、香辛料など、生活に有用な新しい植物を求めることが目的だったが、やがて、コーヒーやゴムなどを発見し、列強が世界中の植民地にプランテーションをつくって世界中で商売をするための重要な産業となっていった。特にゴムは、ブラジルにしか生息せず、輸出を禁止していたパラゴムノキの種を、イギリスのプラントハンター達が密かに国外に運び出し、それを東南アジアのプランテーションで大量生産したという。産業革命以降、様々なゴム製品が生まれ、ゴムタイヤを使う自動車産業が世界の中心になっていく上で、その原料を扱えるようになったイギリスは、大きなアドバンテージを得たことだろう。このようにプラントハンターは、世界の産業構造も変えるような仕事もしていたのだ。ちなみにお茶も、中国から運び出し、インドで生産できるようにしたのがイギリスとのこと。

もちろん、そんな国同士の産業覇権争いとしての植物争奪戦のほかにも、憧れのエキゾチックなパラダイスを自分の庭につくりたいという権力者や大富豪の欲求を満たす為に働くプラントハンターも多かった。幕末、日本にやってきたハリスやペリーも、開国を迫っただけでなく、実際にプラントハンターが同行し、プラントハンティングの旅をしていたようだ。

とまぁ、熱帯温室マニアの第一回は、熱帯温室とはなんぞやを、ちょっと真面目に語ってみた。いや、マジに熱帯温室は知れば知るほど奥が深いんですよ。
日本に少しでも熱帯温室好きが増えることを祈って!

(Text & Photo:tetsuro oh!no)

tetsuro oh!no(テツロー・オーノ!)
インテリア&ファッションイラストレーター
WEBサイト「モンステラ・マニア」の中では、ミッドセンチュリーデザインインテリアをテーマにイラストや、ボタニカルをテーマにしたグラフィックポスターなどを製作発表している。

モンステラ・マニア since2000
1950〜70年代のミッドセンチュリー期に、インテリアプランツとして一世を風靡した観葉植物の王様“モンステラ”を主役に、観葉植物とインテリア、アートを紹介するインテリアプランツ啓蒙WEBサイト。

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