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【女の履歴書】Vol.8 イラストレーター・進藤やす子 「私を成長させてくれたのは、その都度、出会った編集者でした」

  • 2018.9.18
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【女の履歴書】進藤やす子 01

進藤やす子 イラストレーター

1974年生まれ。中学1年生の終わりにファッション女性誌『mc Sister(エムシーシスター)』(婦人画報社)の誌面を見て、女性誌で活躍できるイラストレーターになりたいと思いはじめる。武蔵野美術大学を卒業後、ライオン株式会社に就職。パッケージデザイナーとして5年間勤務した後、フリーランスのイラストレーターに転身。以来、雑誌や広告、自書を執筆するほか、デザイナーとして商品開発に携わったり、メディア出演や講演等も行ったりするなど、マルチに活躍中。最新著書『進藤やす子のファッションダイアリー』が発売中。

イラストレーターへの憧れは、雑誌『mc Sister』が、きっかけ

Q.人気イラストレーターとして活躍する進藤さんですが、いつ頃からどんなきっかけでイラストレーターになりたいと思ったのですか?

絵を描くことが好きだったので、最初は少女漫画家になりたいと思っていました。ですが、中学1年生の終わりに、ティーン誌『mc Sister』(現在は休刊中)に掲載されていたイラスト付きのカルチャーページに出会い、私の夢は変わりました。そのページが衝撃的に面白くて、記事を読ませるために興味を引くようなイラストを描きたいと思い、以来“女性誌で活躍できるイラストレーター”を志すようになりました。

Q.イラストレーターとしての初仕事はいつでしたか?

当時、懸賞によく応募していたんですが、ハガキに自作のイラストを挿入して送ると、それがバンバン当選しまして……(笑)。すると大学2年生のときに、雑誌『caz』(扶桑社)の編集部から、“イラストレーター兼読者モデル(以下、読モ)”として声がかかり、イラスト・ルポを描かせてもらうことになりました。それがイラストレーターとしての初めての仕事ですね

Q.大学卒業後は、大手メーカー・ライオンに就職しています。なぜすぐに、イラストレーターとして歩み始めなかったのですか?

大学3年になり、将来の進路選択をする際に、『caz』の編集の方から、「イラストレーターとして独立したいのなら、一度は社会に出ている人の方が、社会常識が身に付いていて仕事を頼みやすい」とアドバイスをもらったからです。ですから自分の中で期限を設け、一般企業に、パッケージデザイナーとして就職することにしました。

【女の履歴書】進藤やす子 02

Q.会社員とイラストレーター、2足のワラジで過ごした会社員時代は大変でしたか?

当初は3年で退社する予定でしたが、1年目は想像以上に仕事が忙しく、予定を変更し、30才までには独立しようと5ヵ年計画を立て直しました。

同時に、社会人2年目からイラストの売り込みも始めました。ですが、簡単には見てもらえませんから、どうしたら編集部の人にイラストを見てもらえるか考えて、「読モとして応募する方法」を思いつきました。女性誌で募集している読モに応募する際に、通常の履歴書とあわせてイラストのコピーを挟み、「読モではなく読者イラストレーターになりたいです」と書き添えたんです。

他にも、読者モニターに応募して、半年間、雑誌の感想を書いたりしながら、編集部の人と交流する機会を作ったり、とにかく当時は編集者に自分のイラストを見てもらおうと必死でしたね。ときには、興味を持ってもらうために、会社員という立場を利用して、“OLイラストレーター”を自称し、売り込んだこともありました(笑)。

Q.そうして徐々にイラストの仕事も増えていきました。会社を辞める、きっかけのようなものはあるのですか?

イラストレーターの仕事が増えるにつれ、睡眠時間も減少し、血尿が出てしまいました。ちょうどその頃「書籍のイラストを1冊全部担当してほしい」という依頼が来て、「いよいよ会社を辞めようか」と悩んでいたところ、見兼ねた父に、「会社から辞めろと言われる前に、自分から辞めなさい」と諭され、5年間勤めた会社を退社しました。

あの時、辞めるのはイラストではなく会社だと言ってくれて、背中を押してくれた両親には感謝しています。でも、もし私が男だったら辞めさせなかったと、後で言われましたが……(笑)。

左:10月4日よりショップチャンネルで発売される、進藤さんプロデュースのブランド「Ocusay(オキュセイ)」のワンピース(10月4日の発売日のみ16,900円、10月5日~20,000円※すべて税込価格)。ブランドコンセプトは、大人のスタメンアイテム。右:13冊目の著書『進藤やす子のファッションダイアリー』(宝島社)も好評発売中。

Q.フリーのイラストレーターとなり順風満帆なスタートを切った進藤さん。独立して、いちばん苦労した点は何ですか?

フリーになって立てた目標は2つ。自分の名前の入った連載を持つことと、そして著書を出版することです。どちらも数年と経たないうちに実現はできたのですが、特に著書2冊は全く売れず、自分の実力のなさを思い知らされました。

それから3年、著書の依頼はまったくなく、ものすごく落ち込みましたね。そんなとき、当時タッグを組んでいた編集の子から、「作家さんでも売れない時期はある。けれど、売れなくても腐らないことが大事ですよ」とアドバイスされ、めげずにコツコツ、毎日雑誌の仕事と懸命に向き合い続けました。

Q.その結果、3年のときを経て、進藤さんの手掛けるファッション書籍のシリーズの原型が生まれたんですね。

はい。当時は普通のOLさんが着るようなファッションの単行本がなかったこと、私自身も得意分野だったこと、さまざまな要因が重なり、3冊目の書籍はヒット作となりました。何度も重版がかかり、7刷まで発行していただけました。

Q.現在は年に2冊のペースで著書を出す進藤さんにとって、仕事に欠かせないものは何ですか?

仕事への姿勢という点では、“素直さ”でしょうか。私自身、フリーになったのが28歳と、自分では遅いスタートだと思っていたこともあり、誰のアドバイスでも、素直に聞いていた気がします。

何より、お仕事をさせていただいた編集者の方が、イラストレーターやライターを便利屋ではなく、大事にしてくださる方ばかりだったので、そういった方からの助言だからこそ、“素直に耳を傾けられた”というのはあるかもしれませんね。

【女の履歴書】進藤やす子 03

Q.いつもキラキラしていて女性からの支持が高い進藤さん。生きる上で大切にしていることは何ですか?

仕事ばかりしていると、ときに嫌になることもありますから、うまく息抜きをすることです。私の場合、ひとりでふらっと、どこかに泊まりに行くことが多いですね。雑多なものが基本的には好きなので、味わいのある老舗のホテルが好きです。

箱根や熱海は電車やバスですぐなのでよく利用しますし、近場なら西新宿や神楽坂などにも足を運びます。ようは、非日常を感じられれば、どこでもいいんです(笑)。あと、家の前にレトロな銭湯があって、最近はそこもお気に入りです。

Q.イラストレーターとしてはもちろん、現在はマルチに活躍する進藤さんから、20代の方へメッセージをお願いします。

自分の可能性を自分で制限しないでください。やってみてダメだったら次がある。それがダメでも次があるし、その次の次もある!! 私も腐らずに諦めないでここまできたので、1回の失敗で、簡単に夢を諦めないでほしいですね。

Q.今後の夢はありますか?

はい、結婚がしたいです(笑)。

年々、「楽しそうに生きているように見える」と言われる機会が増えている気がします。たしかに、中学より高校が楽しくて、高校より大学、大学より社会人、会社員時代より今が楽しくて幸せなのですが、やっぱり結婚したい(笑)。

イラストでもやりたいことはさせていただいているし、ブランドを立ち上げて洋服のデザインをし、ショップチャンネルで販売させてもらったり、箱根駅伝好きが高じて7年前から関東学生陸上競技連盟と『MORE』編集部のタイアップ企画にも携わらせていただいていますし、他にも断食やお寺修行、フルマラソン体験や婚活レポといった芸人並みに体を張ったお仕事も経験することができました。だからあとは、結婚できれば、昔に願ったことのほとんどを実現できたことになるんじゃないかと思っているです。あー、いい人いないかな?(笑)

【進藤やす子さんの履歴書】

小学校時代 少女漫画家を目指す
中学校時代 女性誌で活躍できるイラストレーターになりたいと思い始める
大学時代 一浪後、美大に進みイラストレーターとして活動開始
23歳 大学卒業後、大手企業のパッケージデザイナーとして就職
28歳 会社を辞め、フリーのイラストレーターになる
36歳 3冊目の著書『欲ばりワードローブ』(産業編集センター)がロングヒット

Photographer/Masakazu Sugino Writer/FUMIKO SATO

撮影協力/MORETHAN DINING(東京都新宿区西新宿4-31-1 HOTEL THE KNOT TOKYO Shinjuku 1F 03-6300-0174)

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