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「世界のベストレストラン50」でサステナブル賞を受賞した「アスルメンディ」を訪ねて

  • 2018.8.27
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「世界のベストレストラン50」のサステナブル賞とは?
 
2018年6月、「世界のベストレン50」という、世界1位から50位までのランキングを発表するアワードが行われたスペインのバスク州ビルバオは、巨匠フランク・ゲーリー建築のグッゲンハイム美術館と数々の美食レストランやバルが軒を連ねる、アートと食の街です。ふらりと入ったレストランや、ホッピングするバルのレベルの高さに驚かされることもしばしば。ただ、せっかく、旅のデスティネーションとしてビルバオを選んだのなら、日本から予約を入れて、わざわざ訪れたいレストランも多くあります。その筆頭が「アスルメンディ」でしょう。シェフ、エネコ・アチャは、35歳という、最年少で三ツ星を取得した気鋭の料理人。伝統的なスペイン料理を再構築したモダンスパニッシュの旗手です。また、今年の「世界のベストレストラン50」では、43位にランクインすると同時に、2014年に続きサステナブル賞を受賞しました。サステナブルとは、ご存知の通り“持続可能な”という意味です。地域の環境と共存し、伝統的食文化を守りながらも、新しい食の可能性を発信するレストランとして、最高の評価を受けたということです。

現在のガストロノミーが目指すところの、体験型のレストラン

街中からタクシーで20分、心細くなるほど静かな山道の向こうに、忽然とガラス張りのモダンな建物が見えてきます。エントランスを入るとそこは、植物が繁り、滝が流れるパビリオン。フィンガーフードが仕込まれたバスケットとウェルカムドリンクですぐにも楽しいピクニックが始まります。ひと心地ついたあとに迎え入れられるのは、なんと厨房。機能美を追求したモダンなキッチンで、スタッフが目の前で、卵黄にトリュフジュースを注入して、ワンバイトなアペリティフを作ってくれます! 料理人の聖地であるキッチンを体感できる楽しさに加え、まるで理科の実験のようなアペリティフ。このダブルなサプライズは、食事の思い出を強烈に印象づけてくれることでしょう。さらに、ハーブやスパイスとともに、洗練されたピンチョスが配置された中庭を回遊するようにして、夢のアペリティフタイムが進んでいきます。


▲モダンなガラス張りの建物が「アスルメンディ」です。レストランというより現代美術館といった雰囲気。


▲エントランスを入ってすぐのエリア。まずここで、ピクニックバスケットに入ったフィンガーフードとチャコリが供されます。



▲ピカピカに磨き上げられた厨房。スタッフを指導する、エネコ・アチャ(右)。機能美にあふれた空間で、目の前で仕上げてくれるアペリティフがいただけるのは刺激的。

 
最後に通されたダイニングの、全面に開かれた窓から見えるぶどう畑の続く絶景には息を飲むことでしょう。その大舞台で、バスクの海や山からの恵みを、一皿一皿の中にアートとして描き出す料理の深い滋味にはただただ感動するばかりです。料理に合わせてペアリングで供されるワインは、実はすべて、親族の経営するワイナリーで造られた極上のチャコリ。チャコリといえば、バスク地方の地ぶどうを使ったテーブルワインの象徴でしたが、こちらのワイナリーでは、それをぐっと洗練された味わいにまで高めています。コースを食べ終える頃には、バスクの食文化をぐるりと堪能した、そんな気にさせられるに違いありません。まさに、現代のガストロノミーが求める体験型のレストランなのです。




▲まるでアートのようなお料理の数々に目を奪われて。海と山の幸に恵まれたバスクならではのメニューです。

地球環境に優しいレストランなわけ

では、エネコ・アチャのレストランが、なぜ、サステナブル賞を受賞したのでしょうか。このモダンな建物は、2010年にデザインされたものですが、リサイクル素材を積極的に使用し、ガラス屋根にはソーラーパネル設置し、さらには雨水をリサイクルするなど、現代建築の最も持続可能なビルの一つとして、LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)のデザイン及び建造証明書を取得。見事にデザイン性とエコを共存させ、時代の先を見据えた建築として評価されました。


▲サステナブル賞を受賞した「アスルメンディ」のエネルギー循環システム。太陽エネルギー、地熱エネルギー、雨水を効率よく利用することで、環境に配慮しています。



▲レストランの屋上階にある温室では、バスク土着の種子を保存し、料理に使用するハーブなどを栽培しています。


もちろん、エネコ氏の思いは建物の構造上の実現だけではありません。すべての生ゴミをコンポスト化して地元の農家に活用してもらったり、バスク土着の種子を400種以上保管する種子バンクを立ち上げ、地元の産物の存続を応援するなど、より健全な未来を描くためのさまざまな努力を続けています。


▲ワイナリーの中にあるカジュアルレストラン「エネコ」の内観。こちらは木をふんだんに使った、ぐっとリラックスできる雰囲気に。

エネコ・アチャの目指すところ

「他人を幸せにするにはまず、自分たちが幸せにならなければいけないと思います」とエネコ氏は言います。サステナブル賞の定義には、従業員の労働環境の確保や、社会とまわりの人たちをサポートするといった内容も含まれています。トップシェフとなれば、求められる役割が、ただ美味しい料理を作ればいい、ということではなくなるのです。
「私たちは環境の番人として、周りの自然を守るために働く責任があります。需要に合わせながらも、私たちの知識や技術を社会福祉のために使うのが私たちの使命です」と公言しています。珠玉の一皿でお客様を幸せにすることはもちろん、従業員ひとりひとりの幸せの確保や、地域の生産者のバックアップを通じて食文化を守ることなどが、オーナーシェフであるエネコに求められているのです。
「重責を感じてはいますが、自分自身でもチャレンジングなこの状況をおおいに楽しんでいます。もちろんオフタイムは、家族と楽しい時間を過ごしますし、自分自身をリフレッシュすることも忘れません。レストランを通じて、環境、健康、社会的生活、そのどれに対しても持続可能な世界を創り出すために、ささやかであっても貢献したいと思っています」。そうした志の高いレストランを実際に訪れて体感してみると、レストランが担う社会的意義に関して、見方変わってくるかもしれません。


▲ベストレストランの会場でも、世界中のシェフやジャーナリストから声をかけられる、気さくな人柄のエネコ・アチャ。料理を通して、地域との共存、バスクの食文化の保存や発展、訪れるお客様はもちろん、スタッフひとりひとりまで幸せにすることを目指しているそう。

日本でも体験できるアスルメンディの遺伝子

海の幸、山の幸に恵まれている日本と少なからぬ共通点を持つバスク地方。そして、美味しいものを食べることが人生の大きな喜びであり、そのためには勤勉であるという日本人とも、多くの共通点を有するバスク人。そんなメンタリティーにシンパシーを感じたエネコ氏は、日本に支店を出すということに前向きに取り組み、昨年秋、西麻布にその夢を実現しました。
西麻布の住宅街の中にひっそりと建つ「エネコ東京」は、エントランスを入ってすぐに、本店と同じピクニックエリアがしつらえられ、優雅なアペリティフタイムが過ごせます。2階に広がるカジュアルモダンなダイニングでは、アスルメンディできっちりと研修を重ね、そのエスプリを学んだシェフが、本家のおまかせコースをコンパクトにしたティスティングメニューを供します。地下には、ウエディングパーティを行うこともできるボールルームもあります。実はここ、本店のすぐ下に広がるぶどう畑のただ中に建つワイナリーの一部であるカジュアルレストラン「エネコ」のボールルームのイメージそのもの。
本店でも、頻繁にウエディングパーティが行われるそう。「新たな人生を歩み始める記念日を作り出すお手伝いができるのはとても光栄なこと。人生の幸せに立ち合える料理人は素晴らしい職業だと思います」とエネコ氏も言います。晴れの日を「エネコ東京」に託すことも、また、新婚旅行でエネコの本家を訪れてみることも、どちらも忘れられない人生の思い出になることは、間違いありません。


▲西麻布にたたずむスタイリッシュな外観の「エネコ東京」。


▲「エネコ東京」にはウエディング用のバンケットも。最大120名までの披露宴が可能です。


▲天井の高いテラスホールでのセレモニーも感動的。

■お問い合わせ先/エネコ東京
DATA
東京都港区西麻布3-16-28 TOKI-ON 西麻布
tel.03-3475-4122
営業時間:12時~15時(L.O.14時)、18時~22時30分(L.O 20時)
不定休
ランチコース¥5,000~、ディナーコース¥9,500~

■ウエディングへのお問い合わせ/tel.03-6225-5495(10時~ 20時・火曜定休)


構成・取材・文/小松宏子

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