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『カメラを止めるな!』監督が告白「愛を持って撮ったからこそ、自信を持って、胸を張って、声を上げていける」

  • 2018.8.24
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インディーズで作られた映画『カメラを止めるな!』が、異例の大ヒットとなっている。6月23日に新宿と池袋のたった2館から上映が始まった本作だが、瞬く間にSNSを中心とした口コミと、著名映画監督・映画レビュワーからその評判が広がり、8月17日時点で全国累計190館以上での上映が決まった。

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この異例の大ヒットは、連日様々なメディアで紹介されているが、今回は、ホラー×テクノロジーをテーマに、新しい恐怖感動を作り出す株式会社 闇の頓花聖太郎氏をインタビュアーに迎え、『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督のインタビューをお届けする。

上田慎一郎監督×頓花聖太郎氏
KADOKAWA

頓花氏はTwitterでも何度も『カメラを止めるな!』に関するツイートをし、Webサービス「note」で書いた熱量の高いネタバレなしのブログが、監督や役者陣に届き拡散され、さらに「まだ4回”しか”見られていない」と話す本作の大ファンだ。

クリエイター同士、しかもホラーというジャンルにおいて共通点の多い二人からは、どんな話が生まれるのだろうか。

自身が「カメラを止めるな!」のファンである頓花氏は、終始かぶりつくように話を聞いていた
KADOKAWA

現場ではすごいキャッキャしながら、ものづくりを楽しんでいる

上田慎一郎(以下、上田):note、読みました。すごくいい文章をありがとうございます。役者もスタッフも、みんなすごく喜んでいましたよ。

頓花聖太郎(以下、頓花):本当にいま、夢のようなことが目の前で起きていて、好きだ好きだ!会いたい会いたい!って言い続けていたら、こういう機会を設けていただけて。『カメラを止めるな!』の奇跡がひとつ増えました。

上田:言ったら届くんですかね?

頓花:はい、今回は本当にそうだと思います。それで、僕自身ホラーの会社をしていて、映像制作など、ものづくりをしているので、僕の言葉で聞いていけたらいいなと思っています。

まずは今回、ゾンビものの映画を作った理由を教えていただけますか。

上田:いまはもう解散してしまいましたが、5年前に「PEACE」という劇団の「GHOST IN THE BOX!!」という舞台を見て、その関係者と舞台を元に映画化を進めようとしていたんですが、結局頓挫してしまって。それで、数年の時を経て、とある映画の企画コンペに出さないか、という話になった時にそれを引っ張り出してきて、丸ごと変えたのが『カメラを止めるな!』です。なぜゾンビか、ということですが、やっぱり僕がゾンビを好きだったということが大きいですね。

ゾンビって、いろいろな仕掛けがあるじゃないですか。腕がちぎれたり、噛まれると感染してしまったり、ゲロを吐いたり。そういうのが、舞台裏を描こうとしたときにドタバタする画が膨らんでいった、というか面白そうだな、と思ったからです。

頓花:僕自身もすごくゾンビものは好きなのですが、きっとゾンビ映画の舞台裏では、まさに『カメラを止めるな!』のようなことが起こっているんだろうな、と思いながら楽しんで観ていました。もちろん、他のゾンビ映画ものは、ワンカットで撮らなくちゃいけない!なんていう劇中の「ONE CUT OF THE DEAD」のような縛りは無いとは思いますが……(笑)。

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KADOKAWA

上田:そうですね(笑)。実際、ゾンビ映画とかスプラッター映画を作っている人たちって、映画自体は怖いですけど、現場ではすごいキャッキャしながら作っているんですよ。ものづくりを楽しんでいる感じというか。それが、僕はすごく好きなんです。

頓花:すごく分かります。自分のまわりのホラークリエイターの方たちも、みんな純粋に、少年のようにキャッキャしながら制作している人たちばかりで。制作陣が楽しんで作ったからこそ、多分多くの人を楽しませられる作品になったんだと思います。

上田:ありがとうございます。

愛すべきポンコツをメインとした映画が作りたかった

頓花:今回、新人の役者さんが多く出てきて、正直見る前は演技面はどうなんだろうなっていう心配があったのですが、もしかしたら少し粗があったかもしれませんが、それを引っくるめて、全員に愛着が湧いてしまったんです。それで、今回のヒットの要因のひとつとして、役者ありきの「あてがき(役者を先に決めてから脚本を書くこと)」があるんじゃないかな、と思っていまして。

上田:そうですね。僕の過去の短編もそうなんですが、不器用な人たちがメインの登場人物っていうものが多いんです。人間として不出来なポンコツ、というか不器用な人たちが、何とか力を合わせてひとつの困難を乗り越えるっていう話ですね。僕もポンコツですし、そういう人たちが僕は大好きなんです。今回も、そういう愛すべきポンコツをメインとした映画が作りたかったんです。先ほどの頓花さんの話じゃないですが、やっぱり自分の好きなものじゃないと、愛を持って撮れないじゃないですか。

それに、映画ができたあとも、結局宣伝するのは役者を含めた自分たちで、逆に言うと、本当に好きなものであれば、自信を持って、胸を張って、声を上げていけるんです。

頓花:おっしゃる通りですね。舞台挨拶も見にいっているんですが、役者の方たちは、本当にそのまま映画から飛び出てきたような感じでした。この手法は、次回作以降も続けて行くのでしょうか。

上田:これまでもキャスティングが先に決まった場合でも、その人に合わせてセリフや行動を書き直し、常にあてがきのようなことはしてきていたので、今回が初めてというわけでは無いんです。おそらく、今後もそうしていくんじゃないかなとは思っています。それが、僕の、僕たちの映画を作り上げるというか。

あてがきって、いまその役として走っているのか、それとも素の自分が走っているのか、が曖昧になってくる瞬間があるんですが、きっとそれがライブ感につながるんだと思います。

頓花:そうですね、もう見ている側として、もしかしたらこれってドキュメンタリーなのか、と錯覚してしまうことがあって。それが、観客を超える、というとおこがましいかもしれないですが、まるで『カメラを止めるな!』の一員になったかのような一体感に繋がったんだと思います。

上田:ありがとうございます。そう感じていただけるとうれしいです。

60点70点のものに落ち着いたら俺は死ぬ、と思った

頓花:それで、クリエイターとしての話になるのですが、ものづくりへの愛情は止められないけど、環境だったり、評価だったり、って絶対いままでにあったと思うんです。監督の中で「カメラを止め”よう”!」と思った瞬間ってあったのでしょうか。

上田:そうですね。僕は中学・高校のときから自主映画やコント映像を撮って、将来も「映画監督になるぞ!」と言ってきたんですが、20歳から25歳のあいだ、映画とは関係のない、カフェを出店したり、SF小説を出版しようとしたりしていたんですね。それは、大好きな映画一本で真っ向勝負することが怖かったからだと思うんです。だって、それでうまく行かなかったら、自分に才能がないっていうのがわかってしまうじゃないですか。でも、25歳で映画だけに集中しよう、という覚悟を決めてからは、うまくまわり出したと思います。

頓花:それからは、順調だったのでしょうか。

上田:いえ。この『カメラを止めるな!』を撮るまでに、短編映画を8本くらい作っていて、ありがたいことにいろいろな映画祭で賞もいただいたんですが、その時の審査員の方たちには「君の映画は、よく出来ているけど、よく出来ているだけだね」とか「小ぎれいにまとまっちゃっているね」とか、結構言われてしまいました。その時は「うるせー」とも思いましたが、実は心当たりがあったというか、自分の手に負えることをやってしまっているんじゃないか?という自覚があったんです。なので、必ずしもうまくいっていたわけではないんですが……。

頓花:でも、今回は、手に負えないことをしたと。

上田:そうですね。手に負えない、手が届くかもわからないというなかでやっていくと、ほつれとかほころびとかが出てくるんだろうなって思っていたんです。でも、その、ほつれとか、ほころびとかのおかげ、というかそれらがフィクションとせめぎあうことで、ライブ感、というか2度と撮れないものが出来るな、と。なので、僕は今回、それらを丸ごと映画のなかに閉じ込めたんです。

頓花:それがワンカットの部分ですね。ここまで大きな移動とか、アクションを伴いながらの、しかも特殊メイクや血糊などの演出を含んだワンカットって、前代未聞だと思っていたんですが、このワンカットを撮っているあいだ、監督はなにを考えていたんでしょうか。

上田:正直、僕も夢中で一緒になって走っていたので、すごく考えられていたかというとそうではないんですが、でも、あのワンカットは、脚本もリハーサルもしっかりと固めて本番に入ったのですが、正直「なにかトラブル起きてくれ!」って思いながら撮っていましたね。「誰か噛んでくれ!」とか「コケてくれ!」とか(笑)。やっぱり、そういう予期せぬトラブルが起きることによって、さっきも言ったライブ感が生まれてきて、二度と作れない映画になると思うんです。なので、もちろん「トラブルよ、起きないでくれ!」とも思っていましたが、「トラブルよ、起きてくれ!」とも思っていましたね。

頓花:手に負えないことをした、とのことですが、手に負えないことをして、それでしかもそれが面白く昇華されるって、ものづくりをする人は嫉妬してしまう奇跡だと思うんですよね。でも、やりたいけどいろんな事情もあってできない、という。どうして今回はこんなにうまくいったんでしょうか。

上田:そうですね……。自分がいままで生きてきて、その人生のなかで好きだったものを詰め込んだ結果、それらが混ざり合って、うまくハマったのが大きいかもしれませんね。もちろん、それがうまくハマるかは僕自身も分からなかったし、いままでずっと短編を作ってきて、渾身の長編ということで、これでまあまあのものを作ってしまったら、60点70点のものに落ち着いてしまったら、きっと俺は死ぬな、とまで思っていました。今回に関して言うと、0点か200点しかないなという気持ちがありましたね。

頓花:もしかしたら0点の可能性もあったと?

上田:もちろんです。37分ワンカットがどうなるか分からない。でも、そんな戦場を走り抜けるしかなかったんですよね。なんで走り抜けられたのかって聞かれると、全員で頑張った、としか言えないですが。

無知で無名で無謀だからこそ出来た

頓花:他のインタビューで繰り返し「無名だからあの37分ワンカットが出来た」とおっしゃっていましたが、なぜここまで無茶が出来たのでしょうか。

上田:そうですね。さっき言っていた手に負えないことは、やっぱり無知で無名で無謀だからこそできたと思うんです。例えば、これが一流の役者、一流のスタッフ、であれば誰かにきっと「やめよう」「無理だ」と言われていたと思うんです。でも、それでも、やるんだっていう気持ちが全員にあって、それは無知で無名で無謀だからこそだったと思うんです。

今回、役者とはリハーサルや飲みの場、他にも深夜に電話して相談したりとか、撮影前にすごく準備やコミュニケーションに時間をかけたんです。これは、有名な役者をキャスティングしていたら、出来なかったことだと思うんですよね。金額は300万円、ですけど、それ以上に、時間をかけているんです。

頓花:でも、その予算でこれだけのものを作られてしまうと、正直作り手としては辛いな、というものも感じています。

上田:そうですね。300万円と無名な役者がいればいい映画が作れるんだぞ!『カメラを止めるな!』を見てみろ!だから同じ条件でいいものを作ってみろ!みたいになってしまうのは間違いなくものづくりをする上では地獄になると思うので、そういうわけじゃないと声をあげていくのは、自分の責任だと思っています。

頓花:はい。あくまでも『カメラを止めるな!』の奇跡だと思うので。それでは、最後に、『カメラを止めるな!』のファンと、わたしのようなファン以上の、というかファンを超えた感情を持っている人たちに一言お願いいたします。

上田:1年前は、僕と役者とスタッフの映画だったんですけど、ありがたいことに、いまは、みんなの映画になっていると思います。一人一人、映画を見てくださった人の映画になっているというか。それは、僕にとっては、スタッフが増えていっている感覚なんです。それが多分頓花さんのいう、ファンを超えた感情なのかもしれませんが。そして、それは本当に幸せなことだと思っていて。なので、これからもぜひスタッフの一員として、お付き合いいただけると幸いです。

頓花:今日は本当にありがとうございました。わたしも引き続き、一員として盛り上げて、応援していきたいです。そして、本当に、カメラを止め”ないで”いただいて、ありがとうございました!(東京ウォーカー(全国版)・ウォーカープラス編集部)

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