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草なぎ剛「僕はものすごく震えました」 【連載コラム】

  • 2018.8.24
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主演舞台「バリーターク」を6月に終え、ひと段落したのも束の間、早くも新たな舞台が決まった草なぎ剛。今度の作品はフェデリコ・フェリーニ監督の不朽の名画「道」を舞台化した音楽劇だ。同作に臨むにあたり「月刊ザテレビジョン」の連載「お気楽大好き!」(10月号発売中)で今の心境を率直に語った。その一部を紹介。

【写真を見る】今度の役は、粗暴でワガママで酒や女も好み、すぐに暴力を振るうどうしようもなく不器用な男

始まって5分で心つかまれ、引き込まれた

12月に東京・日生劇場で上演される音楽劇「道」に主演することになりました。原作はイタリアの巨匠・フェデリコ・フェリーニ監督の名作。演出は世界的に活躍するデヴィッド・ルヴォー氏。舞台のお話をいただいたときは、正直、ビックリしましたよ。何で僕に声を掛けてくれたのかなと思って。

でも興味はすごく湧いた。僕は「道」という作品を知らなかったから、すぐに映画を見ましたよ。素晴らしい映画でね。映画のパッケージ、モノクロの古いフィルムに刻まれたトーン、出てくる風景や男たちのいでたちから乗っているバイクまで、50年代の僕の好きなものが詰まっている感じがして。役者のエネルギーと登場人物たちの生きざまに、始まって5分で心つかまれ、引き込まれました。

この役者は何だと。

物語は、主人公の旅芸人ザンパノが、純粋無垢な女性ジェルソミーナと一緒に旅をするという話。僕が演じるザンパノはぶっきらぼうでワガママ、毎晩違う女性を抱いてるようなめちゃくちゃな男で。そんなザンパノのことがジェルソミーナは好きで、実はザンパノも彼女のことが好きなんだけど、自分でもその気持ちに気付いてないし、表現なんてもちろんできない。ザンパノによって、どんどん彼女は傷ついていく。でも、どこか感じるところがあって、ザンパノについてきてはくれるんだけど…。彼の切なさとか、どうしようもなく不器用な姿を見ていると、もっとうまく生きられないのかなと、もどかしくもなる。最後、ザンパノが海辺で絶望しながら崩れ落ちてしまうんだけど、あそこの彼のアップを見て、僕はものすごく震えました。この役者は何だと。それを舞台で僕はどう演じるのかなと。全身全霊を懸けてこの役に挑んでいかなければと思っています。

今までやった役の中で一番武骨でワイルド

演出のルヴォーさんはとても繊細で、僕なんかより日本のことを理解している方だなと思いました。日本人も日本の文化もすごく好きで、僕がこの作品に関して思ったことや映画の感想を、結構舞い上がって熱く話しているのを、ずっと待ってちゃんと聞いてくれた。もちろん通訳さんはいるんだけど、日本語も分かっていて、すごい安心した。通じ合えたなと思えて。

芝居に関して彼がどういう要求をしてくるのかは分からないし、ドキドキするけど、すごい楽しみです。音楽劇というものもどういうものなのか、歌を歌うのかもしれないし、まだわからないんだけどね。今、ルヴォーさんの頭の中で作り上げている最中で、全くのオリジナル。本もセットも今回のために作られるものなので、大掛かりになると思う。由緒ある日生劇場の舞台に立たせてもらえるので、背筋を伸ばして襟を正して出させていただこうと。

だから、今は身体をつくっていくってところかな。なんたってザンパノは「鋼鉄の肺の男」だからね。「胸部に巻いたクサリを胸筋で切るという芸を売りにしてる」とか資料に書いてあってさ、マジかよって。たぶんまた上半身、脱ぐんじゃない?(笑)今までやった中で一番武骨でワイルドだよ。ハンパない公演数だった舞台「バリーターク」を踏んでなきゃ絶対無理だね。鍛えられましたから。「バリーターク」はアングラというか、ちょっとサイケデリックな幻想みたいなところがあるけど、今回の「道」はドストレートに人間を描いていて、これも真っ向からぶつからないと演じられない作品。新しい扉、また開くんじゃないかな。

これが今の自分の全てで、何一つ必要じゃなかったものってない

僕は舞台とか芝居に関して、僕のところに来たお話は今まで断ったことはないです。信頼して全部任せているので、選ぶというより、来たものはとにかくやる!と。

今回舞い込んできた「道」という作品もそう。タイトルが僕にとっては縁があるというかね。「僕の生きる道」(2003年)だったり「僕の歩く道」(2006年共にフジテレビ系)だったり、タイトルに「道」がつく作品をいくつかやっていて。どういう形になるかわからないけど、僕の人生の道にとっても一つのピースじゃ収まらないような、大きなものになる気がしています。

僕自身が歩んで来た「道」は…、そうだねぇ、いろんなことがあって、人はそうやって今日に至るわけで。これが今の自分の全てで、何一つ必要じゃなかったものってないと思うんです。なので、たとえ他に道があったとしても、近道だとか回り道だとか人生にはいろいろあるのかもしれないけど、どの道でも自分の進む道が正解だと僕は思っています。人って後戻りはできないしね。みんなそれぞれの道を歩いたり、走ったり、止まったり、振り向いたりする中で、僕が今この作品と巡り合えたということは、やっぱり僕の道は合っているんだなと。出合った作品が僕の道標になっているんです。前回の「バリーターク」もそうで、出合えたことによってこの作品が僕に語り掛けてくれる。「いいんだよ、その道で行けよ」って。それでいつも僕は確信が持てる。

世界的演出家デヴィッド・ルヴォー氏と。すでに顔合わせを果たしすぐに意気投合した草なぎ剛は「僕なんかより日本のことを理解している方。すごい安心した」と信頼を寄せる
KADOKAWA

(ザテレビジョン)

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