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独占インタビュー! SZAが語る、音楽と自分と女性と未来。

  • 2018.8.15
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独占インタビュー! SZAが語る、音楽と自分と女性と未来。
2018.08.15 19:00
昨年6月に発表したデビューアルバム『Ctrl』が、グラミー賞で女性最多となる5部門にノミネートされ、今年3月にはプラチナセールスを達成したSZA(シザ)こと、ソラーナ・ロウ(Solána Rowe)。2013年にケンドリック・ラマーらが所属するTop Dawg Entertainmentと契約して以降、ソロアーティストとして、そしてリアーナやビヨンセらのコラボレーターとして、その才能を世界に見せつけてきた。世界ツアーもスタートし、勢いに乗る彼女が、その快進撃の舞台裏を語った。

「それが悲しいかどうかは、私にはわからない」


2枚目のアルバムのレコーディングのため、ロンドンを訪れていたSZAことソラーナ・ロウは、その日、カーゴパンツに自分でカットしたというクロップドTシャツを合わせ、サファリハットをかぶってインタビューに現れた。


「トゥームレイダーのララ・クロフト風なの」


そう言って笑う彼女は、現在27歳。アメリカ・ミズーリ州セントルイスで生まれたソラーナは、CNNのエグゼクティブプロデューサーを務めるスンニ派イスラム教徒の父と、AT&Tの重役でパン・アフリカ主義のカトリック教徒である母親のもと、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)までヒジャブを被って育った。子どもの頃に脅威的な身体能力を開花させ、大学では海洋生物学を専攻した彼女は、モダンジャズサックスプレイヤーのジョン・コルトレーンや、ジャズシンガーのエラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイを愛聴した。


「コルトレーンの感情に訴える、遊び心のある音楽が大好きなの。それが悲しい音なのか悲しくないのかは、私には分からないけれど」


多忙を極める中、マレーシアのタマンネガラ国立公園のジャングルで、大好きなハイキングを5マイル(約8km)も楽しんで戻ってきたばかり。ソラーナは、片時も休むことを知らないらしい。


「だって、やらなければならないことがたくさんあるでしょ? アーティストとして、女性として、人間として、 最高の自分になりたいの。そうすれば、これまで吸収してきたものを、納得のいくカタチでアウトプットすることができると思うから」

「パワースーツを着たビジネスウーマンになりたかった」


かつて、パワースーツを着たビジネスウーマンに憧れ、ミュージシャンになることなど想像すらしていなかったソラーナが、「ご近所仲間」のプロデューサー、マット・コーディと一緒に、地下室に作った簡易スタジオでネットから様々な音源を拾い集めてレコーディングを始めたのは、2011年頃のことだ。そうしてできた音源が、ヒップホップ/R&Bの最強レーベル、Top Dawg Entertainment(TDE)の社長であるテレンス・ヘンダーソン(通称「パンチ」)の耳に入り、2013年、ソラーナは同レーベルと契約。瞬く間に、ケンドリック・ラマーやスクールボーイ・Qの仲間入りを果たすこととなる。


ソロアーティストとして精力的にEPをリリースし、ライブパフォーマンスをする一方で、ソラーナは、ビッグネームとのコラボレーションを通して、ソングライターとしての実力も世界に見せつけてきた。チャイルディッシュ・ガンビーノの『This is America』、映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックに使われたケンドリック・ラマーの「All the Stars」、ニッキー・ミナージュとビヨンセがコラボした「Feeling Myself」や、リアーナのアルバム『Anti』のオープニングシングル 「Consideration」……。一連の共同制作を通じて、彼女はアーティストとしてのアイデンティティを確立していったのだ。


「ソラーナは、いつもとてもパワフルだが、同時に傷つきやすい。そうした彼女の二面性が、あのサウンドをつくりだしているんだ」


チャイルディッシュ・ガンビーノのドナルド・グローヴァーがそう語るように、ソラーナの音楽には、ありのままの自分──内在する危うさや秘めたる願望、揺れる感情を率直に表現する人間らしさがある。『Ctrl』の収録曲、「Drew Barrymore(ドリュー・バリモア)」では脚のムダ毛を剃らないことを告白し、「 Supermodel(スーパーモデル)」では劣等感を吐露。このアルバムは、さながら日記のようだった。

「わからないから、がむしゃらに追いかけていくだけ」


感情を表現することは、ソラーナにとって最も大切な行為だ。それが音楽であっても、ファッションであっても。だから彼女は、「幸せで喜びに満ちた」朝には黄色を選び、「落ち着いた気分」のときは赤、意識が研ぎ澄まされているか、「クラウンチャクラについて考えている」ときはパープルの服を選ぶ傾向にあるのだという。


プラチナアーティストとなり、グラミー賞の5部門、MTVビデオ・ミュージック・アワードの3部門にノミネートされたソラーナだが、自身の想像を超えるこの快進撃は、彼女を追い込んだ。『Ctrl』のレコーディング中、自信を失い、音楽そのものを辞めるとまで言い出したのだ。


「自分にどんな才能があるか、私にだってわからない。音楽が、自分の能力を生かす最良の方法なのかも、実のところ、わからないわ。わからないから、がむしゃらに追いかけていくだけ」


今年6月に喉を痛め、TDEライブでの出演を取りやめていた彼女だが、今は生き生きとステージ上を動き回り、パワフルに音楽に向き合っている。アメリカの音楽メディア『Pitchfork』が指摘した、ミュージックフェスにおけるジェンダーの不平等問題(昨年の大規模フェスの参加アーティストのうち、女性はわずか1/4だという調査結果を発表した)について話が及ぶと、「女性のパワーは優勢よ。誰もがそれを感じている」と、柔らさの中にも強さを秘めた口調で返した。そして、女性の自動車運転を国に認めさせるために戦ったサウジアラビアの女性たちや、子どもを奪還するため移民当局と戦い続ける母親たち、そして、人種や性の差別を乗り越えて成功を掴んだ、黒人女性起業家たちを尊敬しているのだと教えてくれた。


「黒人として、アメリカ人として、そして人間として体験すべきことはあまりに多い。私は一人のアーティストして、自分が挑戦したい、関わりたいと思う作品をつくりあげることで、世界に貢献したいと思っているの」

Text: Liam Freeman

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