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独占取材、世界バレエフェスティバル。アレッサンドラ・フェリの魅せる世界。

  • 2018.8.8
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独占取材、世界バレエフェスティバル。アレッサンドラ・フェリの魅せる世界。
2018.08.08 08:00
3年に一度のバレエの祭典、世界バレエフェスティバルが、この夏開催。世界各国の名だたるバレエ団で活躍するトップダンサーたちが集う豪華舞台で、今回最も注目を集めているダンサーが最年長のアレッサンドラ・フェリ。バレエ界からの引退宣言を経ての復活。12年ぶりに世界バレエフェスのステージに舞い戻って来た55歳の彼女が語る、今の自分が表現したい踊りとは?

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現代の最も優れたドラマティック・バレリーナとして伝説的な存在のアレッサンドラ・フェリ。イタリア出身の彼女は英国ロイヤル・バレエで19歳の時に『ロミオとジュリエット』の主役に抜擢され、アメリカン・バレエ・シアターやミラノ・スカラ座など世界中の舞台で踊った。2007年に44歳で引退するも、2013年に舞台に復帰。50歳で復帰を果たしたのちに、『ロミオとジュリエット』の全幕を踊った。ロイヤル・バレエでは今最も注目されている現代振付家ウェイン・マクレガーがヴァージニア・ウルフの生涯をバレエ化した『ウルフ・ワークス』を彼女のために創作し、英国ナショナルダンスアワードを受賞した。


奇跡の復帰を果たしたフェリは、綺羅星のようなスターたちが集まる3年に一度のバレエの祭典、世界バレエフェスティバルに12年ぶりに出演。大きな黒い瞳、トレードマークの鍛え抜かれたほっそりとした長い脚は健在。Aプロの『アフター・ザ・レイン』では、すべてをさらけ出した装いで驚異的な柔軟性を見せ、成熟した女性の美しさと深い精神性を感じさせるパフォーマンスでひときわ大きな喝采を浴びた。

世界バレエフェスティバルへの出演は、美しい経験。


「世界バレエフェスティバルへの出演は誰にとっても特別な経験だと思います。1985年に初めてこの公演への出演依頼が来た時には、ついにやった!  という気持ちになりました。偉大なダンサーたちと共演できるわけですから。初出演した時にはまだ21歳でとても若かったんですが、今回は最年長となりました。本当に美しい経験だと思います。初めて出演した時には先輩ダンサーたちに霊感を得て、今私は自分が若いダンサーたちにインスピレーションを与える立場になりたい。同時に、彼ら若い人たちにも触発されているんですよ。彼らの熱意や、私がかつて演じた役を初めて踊っているのを観てその初々しさに心打たれます。


もちろん、バレエフェスティバルに尽力された佐々木忠次さんとの美しい想い出もたくさんあります。とても家族的なんですよ。まるで一つのバレエカンパニーのようなんです。一日5時間近い公演時間の上、2週間滞在してお互いの舞台を観ているうちに、ダンサーやスタッフたちがとても親しくなります。こんな素敵な公演は世界中どこにもありません。初めて出演した時には、マリシア・ハイデ、カルラ・フラッチ、ジョルジュ・ドンといった私のアイドル達も出演していて舞い上がってしまったのを覚えています」

『ウルフ・ワークス』で今の私の姿を伝えたい。


Aプロではクリストファー・ウィールドン振付『アフター・ザ・レイン』を踊り、Bプロでは、ドラマティックな名作『オネーギン』のラストシーンを踊る。『オネーギン』のタチヤーナ役は、女優バレリーナ、フェリの真骨頂。 若かりし日においても、昨年のアメリカン・バレエ・シアターの公演においても、身を引き裂かれるような情熱的な演技で観客の心を打ちぬいた。自身も愛してやまないという名作を、思い出の一端として踊るという。そして一夜限りのガラ公演では最新作『ウルフ・ワークス』を披露する。


「今私は、できるだけ新しい作品を踊りたいと思っているんです。過去にとらわれるのではなく、今の私がどのような人間なのかを伝えたい。今回の世界バレエフェスティバルのガラ公演では『ウルフ・ワークス』を踊ることができるのがとても幸せです。ウェイン・マクレガーとのクリエーションはとても楽しかったんです。


過去に(『ロミオとジュリエット』の)ケネス・マクミランが私に作品を作ってくれたように、今はウェインとのコラボレーションを楽しんでいます。機会があればぜひ日本でも『ウルフ・ワークス』の全幕を踊りたいと思っています。とてつもない傑作ですし、現代の作品で、現代の観客に訴えかける力を持っています。過去の作品を踊るのも良いことですが、私たちは2018年に生きているんです。現代のクラシック作品が必要とされています。舞台に復帰してしばらくした後、ウェインが『ウルフ・ワークス』を振付けたい、とやってきたのです。ヴァージニア・ウルフは私と同年代の女性なので、素晴らしい考えだと思いました」


アフター・ザ・レイン』では、レオタード一枚に素足で55歳の美しい肢体を見せた。


「勇気があるでしょう(笑)。私たちは、社会が強いている“美しさは若者だけのものである”という固定概念を乗り越えなければならないんです。すべての年代の人に美は存在しています。私はダンサーとして、自分の55歳という年齢を誇りに思っています。この年齢でまだ踊ることができて、表現できていることを。


かつて映画『ダンサー』で共演したミハイル・バリシニコフは私に勇気を与えてくれました。今彼は70歳。もちろん全盛期のように跳躍したり回転したりはしませんが、非常に偉大な真の芸術家です。良いダンサーにはいつか終わりが来ますが、優れたアーティストには終わりが来ません。アーティストは年齢と共に自分を変容させることができるのです」。彼女の、その輝きに満ちた瞳は、前を向き挑戦し続ける人の証だった。


ドレス ¥2,500,000/DIOR(クリスチャン ディオール) ブラトップ スタイリスト私物

問い合わせ先/クリスチャン ディオール 0120-02-1947
世界バレエフェスティバル 


Bプログラム 上演日時/2018年8月8日〜8月12日 

8月8日 18:00〜 

8月9日 18:00〜 

8月10日 14:00〜 

8月11日 14:00〜 

8月12日 14:00〜 

Sasaki Gala  8月15日 17:00〜 


会場/東京文化会館(上野)
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/wbf/

Photos: Yumiko Inoue Stylist: Kanako Higashi Makeup: ITSUKI Text: Naomi Mori Editor: Yu Soga

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