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子ども靴のプロに聞いた「正しいはき方・選び方」「サイズの目安」「買い替え時」

  • 2018.8.8
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前回は、正しいファーストシューズの選び方をご紹介しました。しかし、最初の一足だからとファーストシューズは慎重に選んだけれど、その後は子どもの足もどんどん大きくなり、次から次へと新しい靴を買わなければいけないからと、選ぶのがおざなりになっていませんか?

まだ足ができあがっていない幼児の靴選びは、ファーストシューズ選びと同じくらい大事です。子ども靴のプロ、シューフィッターの寺杣敦行さんに、足の成長とからめてキッズシューズの選び方をうかがいました。

お話をうかがったのは…

かかりつけシューフィッターの子ども靴専門店 ジェンティーレ東京代表
寺杣敦行さん


FHA(足と靴と健康協議会)認定バチェラー(上級)シューフィッター、幼児子ども専門シューフィッター。革靴好きか高じて靴メーカーに勤務。娘にはかせたいと思う子ども靴が日本では見つからず、ヨーロッパへ探しに行ったのをきっかけに、2008年に子ども靴の専門店をオープン。足の健康を重視し、機能性を第一に考えた子ども靴を、足の特徴や歩き方をチェックしながら調整して販売している。
・かかりつけシューフィッターの子ども靴専門店 ジェンティーレ東京



■子どもの靴選び「何歳まで気をつければいいの?」

――子どもの足は何歳くらいまでに形作られるものなのでしょうか?

寺杣敦行さん(以下、寺杣さん):足は体を支える土台なので、足がぶれると体全体に影響が出てきます。立った時に、かかとの骨とその上の距骨、すねの骨の脛骨が、後ろから見てラインがまっすぐになっていることが理想なんです。

男女でも違いますが、この足首やかかとの骨が大人の骨に置きかわるのが10歳から12歳くらいなので、それまでは靴選びに意識を向けていただきたいですね。足全体の骨の成長(骨化)が終了するのが14歳から18歳くらい。女の子のほうが終了が早く、男の子は18歳くらいまでかかります。

足のサイズが止まるのも、女の子のほうが早くてだいたい中学2年生くらい。男の子は高校1、2年生くらいまで伸び続けるので、足に気をつけるのは決して幼少期だけではない、と覚えておいていただきたいですね。

もう少し細かくいうと、足の成長には土ふまずが大事になってきます。赤ちゃんの時は、座っていると土ふまずがちゃんと見えますが、立って体重が乗るとペシャンと隠れてしまう。骨格としてはあるのに、体重が乗るとつぶれてしまうのが、2、3歳までの特徴です。

徐々に筋力がついて、少しずつ隙間ができてくると、土ふまずの形成が始まったということなんです。それが3歳から6歳くらいまでの間で、土ふまずにとって大切な成長期なんです。そういう意味からすると、年少から年長の3年間というのは特に気をつけたい時期ですね。







■子ども靴の種類別「キッズシューズの正しい選び方」



――スニーカーはどのようなものを選ぶのが良いのでしょうか?

寺杣さん:まずつま先とかかとに芯材が入っていて、走り回っても足をしっかりと支えられるもの。靴底は、足指の付け根付近が曲がるものが良いですね。手で簡単にねじれてしまうような柔らかい靴底のものはおすすめできません。

赤ちゃんの頃はペタペタ歩きですが、3歳前後になってくると、大人のようにかかとから接地する歩き方へと変わってくるので、ファーストシューズよりも足の指の曲がる位置が重要になってくるのです。

また、接地面が広くなっているフレアソールは、支持面積が広いので良いですね。最近はファッション性を追求したテーパードソールというものがあります。フレアソールとは逆で、接地する側の面積が小さいため、不安定でおすすめできません。

――具体的には、どのような形のスニーカーが良いのですか?

寺杣さん:できればハイカットのほうが良いのですが、ローカットの場合は足首周りがより小さくてフィットするものをおすすめします。

ひも靴も良いですね。ただし、脱ぎはきのたびに結び直してください。結んだままにしておくと、ひも靴の良さがまったく生かされないのです。

しかし、園や学校では自分で脱ぎはきしなければいけないので、小学校中学年くらいまで、ひも靴は不向きですね。ひも靴に近い機能をもつ靴としては、マジックテープタイプのものがあります。

ただし、日本仕様のほとんどが、マジックテープはペタンと留めるだけ。これは着脱を容易にするだけで、フィットさせる機能はあまりありません。ヨーロッパのスタンダードは、折り返し式のマジックテープベルトで、足と靴をしっかりとフィットさせやすく、ひも靴に近い感じですね。これも足に良い靴の条件なんです。


――夏はサンダルやビーチサンダルをはくことが多いですが、足にとってはどうなのでしょうか?

寺杣さん:ビーチサンダルは、柔らかいタイプだと指の付け根を曲げて力入れた瞬間にソールが沈んでしまうんです。指の付け根を曲げることで足底腱膜が張って、土ふまずを持ち上げるシステムなのですが、沈むとこの曲がりが正常ではなくなり、土ふまずの形成につながりません。利用するのは短時間が良いでしょう。

でも、鼻緒タイプは、足の指でつかむようにはくのでとても良いんですよ。ふだん足の指を使うことはあまりありませんよね。ソールが革やゴムのトングサンダル、草履はOKです。かかとがしまっていないと足が動いてしまうので、バックバンドが付いているものがおすすめです。

サンダルで一番大事なポイントは、その夏の2~3カ月をジャストフィットではけるサイズを選ぶということです。歩き方や足の骨の配列に影響が出てきてしまうので、決して大きめのサイズは選ばないでください。



――長靴はいかがですか?

寺杣さん:きちんと靴の機能をはたしている長靴はないので、雨が降っている時に短時間だけはくくらいにしましょう。最近の長靴は中敷きが入っているので、それを取り出して足を置いてみてください。その時、つま先に1cmくらい余裕があれば大丈夫だと思います。




■「正しい靴のはき方」と「子ども靴の買い替え時」

――靴の正しいはき方はありますか?

寺杣さん:立ったままではいたり、つま先をトントンする子どもが多いのですが、これはダメです。必ずイスか地面に座って、体重がかかっていない時にはくようにしてください。

まず、ひもやマジックテープベルトを外して靴を開きます。足を入れたら、つま先を持ち上げて、かかとをトントンとします。くつのかかとと足のかかとがぴったりついた状態のままで、ベロを足首にそわせて、ひも靴の場合は下から調節しましょう。

2本のマジックテープベルトの場合は、上から先に留めます。靴の中で正しい位置に足をのせるには、まずは上のベルトから先にしめて、足首を固定してしまうのが一番です。下のベルトを先におろしてしまうと、靴の中で足が前方に出た状態でとめることになります。ここまではつま先を上げっぱなしにしておいてくださいね。

――子どもの靴は、だいたい何足くらい用意するといいのでしょう。

寺杣さん:ファーストシューズは毎日同じでも良いと思います。年少さんくらいになると、靴の傷みが激しくなってきたり、雨などの天候や汚れなどの衛生面があるので、替えがもう1足あると良いですね。

――靴の買い替え時というのは?

寺杣さん:年少以上になると、足の成長から考えた場合、サイズが合う・合わないでいえば、半年くらいははけるでしょう。しかし、それまで靴がもつのか、成長のほうが早いのかという問題になりますね。

また、靴のかかとが斜めにすり減ったままにしておくと接地角度が変わってきて、関節に負担がかかって骨の配列がくずれてしまいます。その場合は、買い替えやソールの修理をおすすめしています。

■餅は餅屋ならぬ「子ども靴は子ども靴専門シューフィッター」へ

――子どもの靴を選ぶ時のサイズ感は、大人とは違いますか?

寺杣さん:子ども靴の場合は、余裕寸法プラス足の成長分を考慮します。あくまでも足の形状と靴の形が合っていると仮定したうえで、1歳の後半くらまでは3カ月で5mm伸びるので、ファーストシューズの場合は、成長分5mmと必要な靴の余裕寸法4、5mmで9、10mmになります。

幼児になると半年で5mmくらい伸びます。3、4歳の場合、靴のつま先の形によって異なりますが、幅の広いものは12、3mm、やや細みのものは14、5mm。中学生くらいになったら16、7mmと、年代によって変わってきます。

――それくらい余裕のある大きめのものを購入するのがいいんですね。サイズは自宅で測れるのですか?

寺杣さん:どんなに良い靴でも、足に合っていなければ意味がありません。足の長さを測るものは売っていますが、靴のフィット具合は専門家でないとわからないので、できればシューフィッターのいるお店をおすすめします。

先日、デパートの子ども服ブランドショップで買った靴が合わずに指に傷ができてしまったというお子さんが店にいらっしゃいました。足のサイズを測りフィッティングをして、これなら大丈夫ですと買った靴のはずなのに…ということでした。

しかし、足と靴の中を測ってみると、適正なサイズよりも2サイズも小さいものでした。本当のプロに頼まないと正しいフィッティングは難しいということなんです。



今の日本の子ども靴市場で、プロのシューフィッターがいる売場で買っている割合は多くて2割くらいだと思います。残りの8割は、自分ではいて判断しなければならないスーパー、量販店、ファッションブランドショップなどです。しかし、そういったお店では足の長さしか測らないお店が多いのが現状です。また、ネット通販を利用している方も非常に多いと思います。

私の店では、足の長さや幅、甲の厚み、内ふまずの長さを測り、フットプリントを取って、足圧や土踏まずの形成具合、歩き方、O脚やX脚、骨のゆがみを見ながら足に適合する靴をフィッティングし、さらに歩き方や足に特徴のある場合は、インソールや靴底の加工も行って販売しています。O脚、X脚やゆがみがあるなど、お子さんの足の特徴、体質を知っていただくことが、健康な足への最初の一歩なんです。



――シューフィッターの方はどのくらいいらっしゃるんですか?

寺杣さん:私の登録している一般社団法人 足と靴と健康協議会(FHA)には、全国に3,708名のシューフィッターがいます。その中で、マスター(名誉職)が11名、バチェラー(上級シューフィッター)389名、シニア専門が152名、幼児子どもの専門が226名。

大人の靴と子どもの靴を見るのはまったく違います。大人の初級を取ったシューフィッターが4,000名弱いるのに、大人の靴のことをわかりつつ、子ども専門の勉強をした人が200名余りしかいないのです。

この少ない人数が全国に散らばっているので、近くで探すのはなかなか難しいですが、お店で測ってフィッティングしてもらうことが一番です。靴と足の形が合っていないと、どんなに高級で良い製法で作られた靴でも、それは足の健康にはつながらないのですから。

寺杣さんからお話をうかがって、足に合う靴選びと足の健康がどれだけ体に影響してくるのかがわかりました。子どもたちがいつまでも健康でいられるように、日ごろから靴選びには気をつけていてあげたいですね。

※一般社団法人 足と靴と健康協議会(FHA)に登録しているシューフィッターは、ホームページから検索できます。
http://fha.gr.jp/



取材・文/河部紀子

(ライターチーム123)

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