1. トップ
  2. ダイエット
  3. 米・医学博士が提唱する効率的な腰筋の鍛え方とは|ヨガ解剖学

米・医学博士が提唱する効率的な腰筋の鍛え方とは|ヨガ解剖学

  • 2018.8.8
  • 7468 views
腰筋を効率よく鍛える方法とは?|ヨガ解剖学
Cover image by RICK CUMMINGS

人体にはどこか制御できない科学者のような側面がある。その最たる例が筋肉の機能のしかただ。筋肉には簡単に働きかけられるもの、つまり、私たちの指令どおりに動くものがある。たとえば、ターダーサナ(山のポーズ)では意識的につま先を広げることができる。しかし、もっと自律的に働いて、指令にいっさい従わない筋肉もある。姿勢を保つために裏方で働いている筋肉などがその典型である。こうした筋肉に意識的に働きかけるのはそれほど容易ではない。そこには、無意識の領域に任せてきた機能が絡んでいるからだ。
概ね裏方で(つまり無意識に)機能している筋肉のひとつが腰筋(一般的に言う「大腰筋」)である。きわめて重要な股関節屈筋の一部で、背骨を安定させるのを助けるコアマッスルだ。なぜこのように大きくて重要な筋肉なのに、脳の運動皮質での重要性がそれほど低いのだろうか。要は、エネルギー効率の問題である。腰筋は座るときや立つとき、寝た姿勢から起き上がるときに使われる。歩く・走る・登るとき、胴体をひねるときにも使われる。腰筋は乳幼児の頃から多用されるため、意識しなくても動きが発生する「裏方役」に脳が割り当てていたというわけだ。
私の経験では、(上腕二頭筋を収縮させて「筋肉を出す」ときのように)腰筋を意のままに動かせる人はほとんどいない。幼少期に腰筋の動きが習慣的なものになっているからだ。しかし、朗報がある。無意識に動く筋肉でも、練習すれば意識的に動かせるようになる。そしてその瞬間、あなたのヨガの練習は一変する。たとえば、上体を右に倒してウッティタートリコナーサナ(三角のポーズ)をすることを考えてみよう。上体を右に曲げるとき、単に重力を利用して上体を右脚のほうに動かすこともできる。しかし、腰筋に「スイッチを入れて」胴体を意識的に曲げることができれば、背骨と骨盤と腰の周辺の筋肉が安定して、最終的には最高の形でこのポーズを助けてくれる。

腰筋を意識しよう

腰筋を目覚めさせるために、まず腰筋の位置を把握しよう。腰筋は第12胸椎(T12)と腰椎(第1腰椎〜第4腰椎。深い層は第1腰椎〜第5腰椎)に起始し、胃と腸(そして女性の場合は生殖器官の背後)を通って背骨の両側に伸びている。背骨から前方に伸びて仙腸関節の前面と交差し、(骨盤内側にある腸骨に起始する)腸骨筋に接続している。腰筋と腸骨筋は密接な働きをするため、腸腰筋というようにひとつの筋肉のように呼ばれることが多い。そこから、腸腰筋は骨盤の縁の上を通って、大腿骨小転子の内側に入っていく(大腿骨小転子とは、大腿骨の上部内側にある取っ手のような構造を指す)。

腰筋を効率よく鍛える方法とは
腰筋の種類や名称はこちらの図を参照(Illustration by MICHELE GRAHAM)

腰筋は多くの関節と交差しているため、体をさまざまな形で動かすことができる。まず、腰筋が働くと腰が曲がる。腰筋が収縮すると、上体が前屈するか、膝が引き上げられる。腰筋の左右いずれか一方が収縮すると、腰筋の働きにより上体が横方向に曲がる。三角のポーズで起きていることがこれだ。腰筋が左右とも収縮すると、骨盤を前傾させて、太腿と胴体を近づけることができる。パスチモッターナーサナ(西側を強く伸ばすポーズ)ではこれが起きている。
腰筋を目覚めさせる過程は、意識的に腰筋に働きかけることから始まる。そのためにヨガのポーズの中にあるいくつかの合図を利用することができる。これまで腰筋を意識的に動かしたことがない人でも可能だ。私は生徒たちや自分自身のヨガの練習で興味深いことに気づいた。一部のポーズで腰筋を意図的に働かせようとし始めると、ほかのポーズを行うときもすぐに脳が腰筋を無意識に働かせ始めるのだ。まるで脳が「‌O‌K、今はヨガのポーズで腰筋を使っているんだね」とでも言って、この筋肉の動きを予測しているような感じだ。私はこの働きを「身体予知能(body clairvoyance)」と呼んでいる。すべきことを無意識に明確に理解し、自動的に実行するという意味である。このため、腰筋を目覚めさせることによって、この筋肉の無意識な動きをこれまでより簡単に利用しようとしているのであり、最終的には意識的に、しかも主体的にこの筋肉を働かせることを習得しようとしているのだ。
ほかの筋肉と同じように、この筋肉も収縮と伸展のバランスをとりたいものだ。そうすれば、腰筋をバランスの良い状態に保つことができ、背骨と骨盤を安定させ、腰や骨盤の痛みの予防に大いに役立つ。上のポーズは、腰筋を目覚めさせて腰筋のさまざまな部分を働かせ、最終的には脳にこの筋肉を作動させやすくするのに役立つものとなっている。

腰筋を目覚めさせる3つのポーズ

普段、無意識に動かしている腰筋に働きかけ、意識的に動かしていこう。ストレッチと筋強化の両方を行うことで、筋肉の収縮と伸展のバランスがとれる。

ナーヴァーサナ(舟のポーズ)

腰筋を効率よく強化する方法とは?
(Photo by RICK CUMMINGS)

ほとんどの人が全面的に腹筋のポーズだと思っているだろうが、実は脚と腰筋にもかなり大きな動きが起きている。実際、これは腰筋を等尺性(アイソメトリック)に強化するのにうってつけのポーズである。膝を曲げ、足をマットにおいて背筋を伸ばして座る。腰の両側に指を下ろし、軽く引く力を利用して、胸郭を引き上げる。息を吐きながら両足を床から引き上げて、太腿が床に対して45〜50度の角度になるようにする。両腕を平行にして、脚の脇に伸ばす。大腿骨の付け根を床に押し下げて、ポーズをしっかり固定しつつ胸骨を引き上げる。無理なくたっぷりとした呼吸を5〜10回する間、この姿勢を保つ。

ヴィーラバッドラーサナ Ⅰ(戦士のポーズ Ⅰ)

腰筋を効率よく鍛える方法とは
(Photo by RICK CUMMINGS)

このポーズは前脚の腰筋を強化し、後ろ脚の腰筋をストレッチするのに役立つ。次のように通常の方法でポーズに入る。足を90〜120cm離して立ち、両方のかかとを一直線に並べて、後ろのつま先をマットの後ろのラインに対し45度の角度になるようにおく。前の膝が第2指の上にくるように曲げ、両腕を上げる。前の膝をまっすぐ引き上げる動きをイメージしよう。実際に膝を引き上げることはできないが、この動きによって腰筋の収縮が促され、骨盤が安定するように感じられるはずだ。5〜10回深く呼吸する間このポーズを保ったら、反対側も同様に行う。

ウッティターパールシュヴァコーナーサナ(体の脇を伸ばすポーズ)

腰筋を効率よく鍛える方法とは
(Photo by RICK CUMMINGS)

このポーズも戦士のポーズⅠのように、前脚の腰筋を強化し、後ろ脚の腰筋をストレッチする。戦士のポーズⅠから、後ろ足をマットの後ろのラインと平行にして、かかとと土踏まずが一直線に並ぶようにする。前の肘を前脚の太腿におき、反対の腕をマット先端に向けて頭上に伸ばす。ここで、上体を傾けて前の肘を太腿に押しつける。しばらくリラックスしたら、大腿四頭筋を肘に向かって押し上げてみる。最後に、このふたつの動きを同時に行う。上体も太腿もどちらも動かさないこと。それでも、骨盤の中で腰筋が等尺性に(つまり筋肉の長さを保ったまま)働いているのを感じるはずだ。

Model by Caitlin Rose Kenney
Illustration by Michele Graham
Styling by Jessica Jeanne Eaton
Hair&make-up by Beth Walker
Translated by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.52掲載

オリジナルサイトで読む