1. トップ
  2. 子どもの靴選び「もしかして間違いだらけ?」達人に聞いた正しいファーストシューズの選び方

子どもの靴選び「もしかして間違いだらけ?」達人に聞いた正しいファーストシューズの選び方

  • 2018.7.31
  • 4008 views



足を形成している時期の靴選びはとても大切。しかし、大人でも自分の足に合った靴選びに苦労しているのに、小さな子どもは自分で合うか合わないかを判断できないので、靴選びは難しいですね。

子どもにはどんな靴を履かせるのがいいのか、子ども靴のプロ、シューフィッターの寺杣敦行さんに足の健康を踏まえながらお話をうかがいました。

お話をうかがったのは…

かかりつけシューフィッターの子ども靴専門店 ジェンティーレ東京代表
寺杣敦行さん


FHA(足と靴と健康協議会)認定バチェラー(上級)シューフィッター、幼児子ども専門シューフィッター。革靴好きか高じて靴メーカーに勤務。娘にはかせたいと思う子ども靴が日本では見つからず、ヨーロッパへ探しに行ったのをきっかけに、2008年に子ども靴の専門店をオープン。足の健康を重視し、機能性を第一に考えた子ども靴を、足の特徴や歩き方をチェックしながら調整して販売している。
・かかりつけシューフィッターの子ども靴専門店 ジェンティーレ東京



■子どもの足「特徴を知ったうえで靴を選ぼう」

――正しい靴選びが足に良い理由は何ですか?

寺杣敦行さん(以下、寺杣さん):足の中でも、足首から下の部分の耐用年数はどれくらいだと思いますか? 一生もつものだと思っているのではないでしょうか。実は、およそ4、50年といわれています。

足首から下の部分には片方だけで骨が28個ついていて、それがじん帯でつながっています。足は体を支える土台になるので、立ち上がって歩いている時の骨の配列を、いかに正しく長い時間保てるかにかかってくるんですね。元気なお年寄りで歩いている方がいますが、誰もが90、100歳まで自分の足で歩けるわけではないんですよ。



靴は、足の健康を保ち骨の配列をくずさないためには大事なもののひとつです。足の骨の配列が全身の骨のバランスにつながっているので、例えば足首が内側にずれてしまうと、すべてに影響してしまいます。健康に自分の足で長く歩くには、日常生活を通して筋力をつけながら骨の配列を守っていくことにつきます。

そのための靴の役割は50%くらい。もう半分は先天的、遺伝的な体の性質と、後天的な日常生活による影響に気をつけることですね。

――正しい靴選びが健康に大きく関係しているのですね。

寺杣さん:正しいサイズと足の形に近い木型の靴をはけば、立った時にまっすぐな姿勢になります。まっすぐな姿勢=まっすぐな骨の配列となり、正しい歩き方と体重移動ができるので、体に負担がかかりません。すると、足の骨の配列が整って成長できるのです。

――サイズだけではなく、木型も重要なのですか?

寺杣さん:写真のファーストシューズ2足は、デザインとサイズは同じなのですが、木型が違います。靴を作る時は必ず木型を作って、これを革などの素材でくるみますが、右は標準からやや幅広の子まではけるもので、左は足幅が細い子向けです。

まず、お子さんの足の特徴を知ったうえで、その特徴になるべく近い形の木型の靴(靴の形)を選ぶのが最大のポイントです。どんなに足に良い靴と宣伝されていても、足の特徴と靴の形が合っていなければ、将来、足のトラブルの原因を作ってしまう可能性があるんです。



私の店ではこのように幅や甲の厚みの違うものをいくつか用意して、初めて来たお客さんに対応できるようにしています。しかし、ファーストシューズはひとつの型しかないというメーカーさんもあります。ひとつの木型でさまざまな足の形の子に売っているというのが、今の業界の現状なんです。




■正しいファーストシューズの選び方は?

――ファーストシューズから意識していかないといけないのですね。どのようなものを選ぶといいのですか?

寺杣さん:ファーストシューズの定義というのも曖昧ですよね。生まれてすぐの記念に買えばファーストシューズと呼べるのですが、日本の場合は、家の中で靴をはかない文化なので、外で歩くための靴、初めて買う外ばきがファーストシューズでいいと思っています。

ファーストシューズ選びには、いくつかポイントがあります。歩き始めたばかりの赤ちゃんは、ひざを曲げてバランスがくずれないように、足と足の間隔を広くして支持面積を大きく取り、左右にぶれながら歩きますよね。まだバランスをくずしやすいので、靴底の幅が広く安定性のあるものがいいですね。

外は家の中みたいに必ずしも平らではなく、普通の道路であっても傾斜が付いていたり、デコボコしたりしています。ソールがふにゃふにゃしていると足を支えられなくなってしまうので、しっかりしたものがいいのです。

でも、ソールがしっかりしているだけではダメなんです。足指の骨の付け根は、それぞれが曲がるから歩行できます。その部分と靴の曲がる位置が合っているものを選びましょう。




――ハイカットの靴はどうですか?

寺杣さん:ハイカットは動きにくいんじゃないかという声もあるのですが、ハイカットをはかせて運動機能のテストをしてみると、まったく遜色がないという論文もあります。

確かに、ハイカットはローカットより足首の可動域が狭くなりますが、今は守りながら足をきたえるというのが私たちの考えです。骨の配列を守るために足首をガードしながら、たくさん遊ぶ。それでもちゃんと筋力がついてくるんですね。また、革靴だと土ふまず、足首、かかとの部分がよりフィットするんです。

――スニーカーはクッションがあるので良さそうですが…。

寺杣さん:今、お年寄りの靴で、ソールのクッションがあり過ぎることで骨刺激が失われてしまうという問題が懸念されていますが、子ども靴にも同じことがいえます。また、それと同様に、赤ちゃんが転んだら危ないからと、室内にジョイントマットをしく家庭が多いですが、実はそのほうがかえって危ない場合もあります。

赤ちゃんは倒れてバランス感覚を養っているんですね。赤ちゃんの足はぽっちゃりしていますが、あれはやわらかい骨を保護するためにたくさん脂肪がついているんです。あの脂肪だけで十分なんですよ。

日本は過保護的なところがあり、それが靴にも影響されています。脱ぎはきが多い文化なので、特に小さい子は、それを親が手伝いますよね。そのため、親が簡単に脱ぎはきさせられる靴ばかりが重宝され、日本の子ども靴はガラパゴス化しているといえるでしょう。

それが靴の本来の機能と反比例しているのです。裏を返せば、脱ぎはきに手間がかかる靴ほど、足に良いと覚えていただけるといいですね。

■子どもの足「足が退化している現代っ子」



――子どもの足のトラブルはどのようなものがありますか?

寺杣さん:最近の子どもは、5本の指の付け根の中足骨の横のアーチが崩れやすくなっています。中年以上の大人は横のアーチが崩れて開帳足になっているのですが、それと同じ傾向がすでに子どもにも見られているのです。本来、子どもは成長期でアーチが作られなければいけないのに、すでに退化しているんですね。

――それはなぜでしょうか?

寺杣さん:一番の原因は昔に比べて歩いていないからなんです。便利な乗り物ができて、幼稚園や保育園の送り迎えは自転車や車になり、足を使っていない。学会の論文で、家から幼稚園まで歩く距離が長い子のほうが、土ふまずの形成率が高いという研究結果が発表されています。

――できるだけたくさん歩いたほうが良いのでしょうか?

寺杣さん:昔に比べて現代人は歩かなくなっていることは事実です。足を使うということに関しては、昔の生活のほうがはるかに健康に良かったのです。

時間に余裕のある時、自転車での保育園の送迎を週に1~2回は歩いて行ってみる、近所への買い物にベビーカーを使わずに歩いて行ってみる、緩い坂道を散歩したり、かけっこをしてみる。なかなか外で遊べない時には屋内でジャンプしてみる、それも難しければ、つま先立ちをしたり、足指じゃんけんをするだけでも確実に効果があるんです。これは、子どもも大人も同じで、いつも足や足の指を使うという意識が大切ですね。

――外反母趾など、大人と同じようなトラブルも増えているのですか?

寺杣さん:幼稚園に通っている3~5歳児の20%くらいで、すでに外反母趾が始まっているそうです。また、店の近くの公立小学校のフットプリント検査では、8割の児童が浮き指であることが報告されています。それは、なりやすい骨格や体質の遺伝と、靴が合ってないためです。きつい靴はもちろん足をしめつけるのですが、逆にゆるいと足が前後左右にずれてしまうので、どちらにしても同じことがいえるんですね。

現代の子どもの足が退化しているとは、かなりショッキングな現実です。イギリスでは、すでに1800年代に、子ども靴の選び方が健康に影響を及ぼすとうたった靴メーカーの広告ポスターが作られており、「日本は足の健康と靴選びに関して後進国なんです」と寺杣さん。

欧米諸国に比べ、日本の靴の歴史は浅いものの、今や私たちの生活に欠かせないもの。もっと知識をもって、正しい靴を選んであげたいですね。次回は、キッズの靴の選び方についてうかがいます。

取材・文/河部紀子

(ライターチーム123)

元記事で読む
の記事をもっとみる