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Musée Yves Saint Laurent - イヴ・サンローラン美術館 -【Nahoのおパリ文化回覧帳 vol.7】

  • 2018.7.3
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実際にショーが行われた空間。

 

昨年の10月にリニューアルオープンしたMusée Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン美術館)へ。

 

メトロ9番線、アルマ・マルソー駅から徒歩5分。超高級住宅地の一画にあるこの美術館の建物は、ナポレオン三世様式の華麗な佇まいで、1974年から2002年までサンローランの元メゾンだった場所です。

 

 

最初の展示室に入ると、燦々と光り輝く優美なシャンデリアが目に飛び込んできます。

ここは元々、コレクションの招待客が、プレゼンテーションの後に服を試着し、オーダーも一緒にしていた試着室でした。

 

同様に、1976年までは、この場でファッション・ショーも開催されていました。

映画《SAINT LAURENT/サンローラン》でその再現を観ていたので、(改装前にも私はこの美術館へ来たことがあるのですが) やはり何度訪れても、サンローランが初めてショーを行った時のシーンを思い出してしまい、勝手に胸が高鳴ってしまうのであります。

 

 

サンローラン、青年期のデッサン

 

ここでは、サンローランの青年期に描かれたイラストが複数展示されていました。

 

彼が13、14歳の頃に描いたと言われる、フローベール作ボヴァリー夫人の書き写しに独自のデッサンを付けたものや、L’Amourと題したオリジナルの作品が、彼の本名、Yves Mathieu-Saint-Laurent またはYMSLのサイン入りで飾られていました。

 

 

1950年、彼が14歳の時、ルイ・ジュヴェが演出したモリエールのL’Ecole des femmesを観劇。

 

その演劇体験が、彼のアーティストとしての情熱を掻き立てました。特に、その時、舞台美術と衣装を手掛けたクリスチャン・ベラールに多大な影響を受けたようです。その演劇の登場人物をデッサンした作品も。

 

 

《Paper dolls》は 、多感な10代の頃から既にモードに対して情熱があったことを明示。

彼は、11の紙人形に対し、500点ものアクセサリーと洋服を作ったようです。

 

まだティーンである時代に、デッサンの才能と素晴らしい色彩感覚を持ち、さらに、女性の美とエレガンスを表現できる類まれな才能に恵まれていたなんて、、こうして作品を見ながらただ驚き、感心するばかりでした。

 

 

 

代表的なコレクション作品を、飽くまで至近距離で。

 

 

他の展示スペースでは、サンローランの代表的なコレクションの数々を間近で堪能することができます。

 

また、洋服だけでなく、ドレスの素材に関する制作過程のアーカイブなども展示されていました。

 

 

《Exotismes》と題した展示スペース。

 

彼の創作の源は旅でした。

 

それは、カウチに座って本を読みながら行うイマジネーションの旅と、実際の旅。後者では、モロッコやアフリカ、ロシアやアジアなどを訪れ、それを自身のクリエーションへと落とし込み、発展させていきました。

 

 

《Hommage à la mode》サンローランは、彼自身の作品を通して、モードの歴史を振り返ることにチャレンジしました。

 

古代や中世の時代からインスパイアされた作品たちは、月並みですが、ため息しか出てこない。

美しさってやっぱりショック(衝撃)なのだなと実感するのであります。

 

 

黒のベルベットに刺繍が入った中央のロングドレスは、パリのクリュニー中世美術館に所蔵されているLa dame à la licorne(貴婦人と一角獣)からインスピレーションを受けて制作されたもの。シルクのベルベットは大変美しく、同様に絹で施された刺繍も見事な職人技でした。

私はベルベットが大好きなので、しばらく固まったように眺め、言葉に例えるのが無意味なほど、深い感動を覚えました。そこには、たくさんの才能が結晶となって遺っていたからです。

 

 

それから、サンローランのシンボル的存在であり、珠玉作品の一つでもあるCoeur (ハート)。

 

宝石そのものの存在感や輝かしさだけではない魅力が、そこには在りました。血の滴るハートは、どこか痛々しく生身のようで、サンローラン自身の生涯と重なりました。

 

彼の創作に対する熱意も、こうして心血を注いでいったからこそ、後世に残る素晴らしい作品が作られていった、というのは言うまでもありませんが、それを一つの作品の中に凝縮して物語っている様に思えたのです。

 

 

 

彼の遺した空気を感じる《Le studio》

 

そして、美術館2階の一番奥には、《Le studio》というサンローランのデザインスタジオがそのまま再現されています。

 

このスタジオを見て最初に感じたのは、意外にもナチュラルな雰囲気であったこと。

そこに彼は居ませんが、とても穏やかな空気が流れている気がしました。

 

大量の資料が本棚に並べられ、彼のデスクの上には、彼の愛した小物類がきちんと並び、壁には交流のあったアーティストや女優、愛犬の写真が飾られていました。それは、モードの帝王と呼ばれた偉大な人物に対して、どこか親しみを感じてしまう雰囲気でもありました。

創造する為に一番多くの時間を過ごしたであろう書斎机やその周辺スペースに、自分が美しいと思うもの・好きなもので埋めるという行為は、私が思うに、愛するもの一つ一つに対する尊敬の表れであり、心の支えであったように感じるのです。

また、彼の心を奪うインスピレーションの源が、彼の才能のフィルターを通すことで、また新たな美となって生まれ変わり、時を越え、繋がっていったのだなあと思ったのであります。

 

ピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団に保管する為、サンローラン自らが選んだ膨大なコレクションの数々は、その時々で展示内容が変わっていきます。小さい美術館故に、間近で圧倒的な美しさを堪能できる醍醐味が、この美術館にはありますので、また別の機会にも足を運んでみたいと思います。

 

そして、マラケシュにもできたサンローラン美術館へいつか訪れてみたいです!

 

 

 

Musée Yves Saint Laurent

5 avenue Marceau
75116 Paris

開館時間:火曜日〜日曜日、11時~18時まで

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