直球の愛情【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第18話】

桃香が会社のパソコンの前でぼんやりしていると鮎子が小声で話しかけてきた。

「最近、仕事が上の空っぽいぞ。なんかあった? 慎吾が迷惑かけてない?」

「ううん、全然そんなことないよ。楽しくやってるよ。鮎子、給湯室行こうか。ここ乾燥しててのどがイガイガするから」

ふたりは、給湯室の壁にもたれかかり、立ったままあたたかい柚子茶をすすった。柚子茶を飲んだあと、カリン飴を舐めると、のどの調子がよくなる。冬は喉の乾燥に人一倍気を遣う。急に歌入れの仕事が入ったときに声がかすれていると、迷惑をかける。桃香は喉をいたわっている。

「鮎子、慎ちゃん、元気そうになったよね。バイトとフットサル両方充実してるみたいで」

鮎子はにっこり笑う。慎吾と口元の感じが似ていることに、桃香は初めて気づいた。仕事中はポニーテールにして髪をまとめ、黒ぶちの眼鏡をかけているので、まじめなOLさんだ。週末になると。巻き髪にして派手な色のワンピースに着替え、リップグロスを盛り塗りし、横浜や自由が丘に繰り出している。

「桃香には感謝してるよ、まじで。あいつ、昔みたいにしゃべるようになったし。冗談も言うようになったもん。それにね、ちゃんと就職するって、スポーツリハビリの専門学校探し始めたよ」

「そうなんだ! よかったね。フットサルの付き添い、もう行かなくていいかな」

「え、もう少しついててやってよ。慎吾きっと桃香のこと気になってるのよ。姉としてはお付き合いして欲しい気持ちだけどね。彼氏いないじゃない、桃香。」

桃香は口ごもる。

「…いないけどさ」

「気になる人がいる?」

一瞬、天井を見つめて考えた。慎吾のことも充分気になる。でも、先週の冬馬の告白が頭の中でローテーションしているのだ「昔からお前のこと好きだからさ」。青白い光とともに。愛の言葉を直球でぶつけられたことははじめてだった。歌の中ではロマンチックな歌詞がいくらでも出てくるが、現実にその言葉を投げかけられると、女性はこんなに嬉しいものなのかということにも気づいた。

(続く)

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(二松まゆみ)

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